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朱子の倉庫

二次創作作品の倉庫です。
取り扱いジャンルは、花とゆめにて連載中のスキップ・ビート!、CPは蓮×キョーコです。






キョーコさん記憶喪失話。
















ふとした瞬間、よぎる影があるの。
それは目を凝らすと消えてしまって、探せば探すほど身を潜めてしまう。
見えるのに、そこにあるはずなのに、捕まえられない。
とても大事なものなのに。それだけは、わかるのに。だけどけして、私の目の前には現れてくれない。
だからきっと、私は一生、それを追いかけ続けるんだと思うの。












「少し、妬けるね。まるで恋をしてるみたいだ」

「そう、なのかな?わからないです。自分でもほっておけばいいのにって、思うんですけど……諦めきれなくて」

緩く自分の体に回された腕をさらりと撫でながら、ぽつぽつと呟く。
私の、なくした記憶のことを。
もう、5年も前のことだ。不慮の事故だったと言う。古いスタジオで、撮影中に落ちてきた照明が私を直撃した。私は3日意識を取り戻すことがなく、ようやく目覚めても、数年の記憶を失っていたのだ。

「まあ、いいけどね。俺が一番だったら、それで」

記憶をなくした私に、ずっと寄り添ってくれていた人。大切な、愛しい人。
大好きな、広い大きな胸に甘えて、私は彼を見つめた。

「もちろんです。好きなのは、あなただけ……」

「キョーコ……」

交わす唇。シーツが体を滑り落ちて、お互いの生まれたままの姿があらわになる。
記憶の影は今も尚、私にその存在を匂わせて、忘れることを許さないとでも言うように私の視界を掠め続ける。ふとした瞬間脳裏をよぎる、彼とは違う黒髪のさらさらとした感触とか、唇が形作る彼とは違う音の名前とか。それを意識するたびに、全て思い出したら、私は彼への今の気持ちを忘れてしまうんじゃないかと不安になる。
頬を包む手のひらにすり寄って、薬指にキスをする。お揃いの指輪が光る指に。

「もし、私の記憶が戻っても……離さないって、約束してくれますか?」

「もちろんだよ。君を手離したりなんてしない。俺たちは、ずっと一緒だよ」

素肌を包み込む優しいぬくもり。それを噛み締めて、私は彼の耳に囁いた。








「愛してる……久遠」




微かな光にも煌めく金髪を揺らしながら、彼は碧い瞳を細めてキスの雨を降らしてきた。


end.