時系列的には『恋人はサンタクロース』の続きになります。
人間、一つ欲を知れば段々と欲張りになっていく。
約束だけで充分だったのに、そばにいてくれないことが悲しいだなんて。
涙を流しながら蓮を見送った後に、これではサンタクロースの奥さん失格だ、と思った。
だから、蓮はプロポーズをしてくれないのかもしれない。サンタクロースの仕事に誇りを持っている蓮を好きになったのに、年に一度のお仕事を応援できないから……。
薬指の指輪はしっかり馴染んだけれど、結婚の約束の、その先の言葉は3年経った今もまだ、もらえないまま。
クリスマスの日はご飯も食べずに飛び回っている蓮が帰ってきた時のために、お風呂や夜食の準備をしながら、溜め息を吐く。
最近ではクリスマスが、誕生日が近づく度に気分が落ち込んでしまう。今年は特にひどくて、食欲が出ないし体がダルいし、熱っぽい。
かけていたお鍋の火を消して、ソファに横になる。中途半端にお店を広げた台所が見えて、なんだか泣きたくなってきた。
蓮はサンタクロースだから、クリスマスに一緒にいられないのはしょうがない。
だけど今日は、私の誕生日だ。
携帯には大学の友人や家族からのおめでとうメールが届いている。蓮だって、仕事から帰ってくればたくさんたくさん、お祝いの言葉をくれるだろう。だけど、それはおそらく、もう日付が変わってしまった頃になる。本当にいてほしいのは、今なのだ。たとえそれ以外の日をどれだけ一緒に過ごしていても、特別な日にはやはり、特別な気持ちを共有したい。
そう思うことは、いけないことなの?
蓮が本当に申し訳なく思ってくれていることをわかっていて、まだそんなわがままを抱える自分が許せない。
そんな自己嫌悪の坩堝にグルグルと身を任せていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。ふと目を開くと、辺りは暗くなっていた。
どれだけ時間が過ぎたのか、と時計を探すけれど、真っ暗で何も見えない。電気をつけようと立ち上がって、その暗さに違和感を覚えた。
日が落ちたとはいえ、こんなに暗いだろうか。そもそも、私は電気をつけて食事の準備をしていたはず。
嫌な予感に、冷や汗が背中を滑り落ちる。
――私、玄関の鍵、かけてたかしら?
その時、カタンと物音がした。
「!」
ざぁっと、血の気が引いていく。緊張と恐怖に、口の中がからからに渇いていった。
ミシミシと、廊下を歩く音がやけに大きく聞こえる。その音は私のいるリビングに近づき、やがて止まった。わずかに軋みながら、ドアが開けられる。
私は体を固くして、ぱちんと電気のスイッチの入れられる音を聞いていた。
to be continued...