冷蔵庫の憎いヤツ The Little Son of a Bitch in My Fridge | zuzu's room ズーズーズルーム

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筆者のところには、冷蔵庫に入れておくと開けるたびにしゃべる

おもちゃがあるのだが、いまでも売っているのだろうか。



筆者のは、筆者が脱サラして間もなかった数年前、

筆者が引きこもりになってしゃべり方を忘れてしまうことを懸念した

友人Y子が 「せめてコレとでもしゃべっとけ。」 とくれたものである。

もちろん早速冷蔵庫に入れたが、

これがうるせえのなんのってな。

うるさいのもうるさいが、口調が性格悪くて神経に触るのだ。

それで、3日ほど後に取り出して、

冷蔵庫の15分の一ほどの頻度でしか開けぬ乾物の引き出しに

左遷した。



コイツは光に反応するので、冷蔵庫を開けたとき、庫内のランプが

点灯することによって起動する。

乾物の引き出しに入れ、しかも引き出しを開けても光が

届きにくいよう、上にきな粉のパックまで載せてやった。

引き出しを開けてもうんともすんとも言わないことすらあるので

たいへん気持ちがせいせいしたものである。



たまに光を感じて

「おーっじゃましてま――――っす!!」

とか言って筆者を飛び上がるほどビックリさせるが、

乾物の引き出しは小さくて、目当てのブツを探して

長時間開けっぱなすこともないため、

コイツも第一声のフレーズ以外ほとんどしゃべることはなくなった。

そのため、Y子のありがたい心配りに対する謝意を時折思い起こしこそすれ、

イラッとさせられることもなく時は流れて5、6年が経った。



出番がなさすぎてバッテリーの消耗が甚だしく抑えられる結果となり、

5、6年たっても死なないのであるが、

そんな先日の10月某日、朝起きたら冷蔵庫の扉が1cmほど開いていて、

結露した水で庫内がビチョビチョになっていた。

独り暮らしの筆者の冷蔵庫は中型で、ほとんど何のガジェットもついていず、

当然ながら、冷蔵庫開いてまっせお知らせ機能も付いていないのだ。

筆者が寝ている数時間にわたり、うっすら開いた冷蔵庫から漏れ出ずるランプの光が

真っ暗なキッチンを照らし続けていたのか、と思うと、

タイムマシン屋たたき起こしてタイムマシン買って来い!!って感じである。



どういう構造か知らないが、冷蔵庫の方が空いているだけで

冷凍庫の方も具合悪くなってしまうな?

冷凍食品が解けてしまうところまでは行っていなかったが、

霜で何もかも白ーくなっていたし、魚の切り身などはダメそうであった。



冷蔵庫の中がこういうことになったからといって

家が火事になるわけでも誰かが死んだりするわけでもないが、

死ぬほどイヤである。

朝から意気消沈して、肉やらミルクやら悪くなりそうなものの

素早い消費方法について考えたりしながらビチョビチョを拭いているとき

気が付いた。

―あの激ウザしゃべるおもちゃが入れてあったら、

          こんなことにはならなかったのではないか―

夜中ならヤツの声が寝室まで聞こえたはずだと思うのである。



そう思い付くや否や、乾物の引き出しからヤツを取り出すと、

たちまちウザいハイテンションにて

「おーッジャマしてまーーーーーッす!!」

と騒ぎ、続けてなんのかんのと久しぶりのフレーズをベラベラしゃべり出すヤツを

すっかり生ぬるくなった冷蔵庫に放り込んだ。



それからというもの、来る日も来る日も冷蔵庫を開けるや否や、

間髪を入れず、

「おーッジャマしてまーーーーーッす!!」

あるいは

「やあああッほーーーーーー!!!」

から始まって

「まァーだココにいてもいいい??」

「まアた甘いもの?!」

「解ォけちゃーうよオオオオオオ!!」

「開アけすぎじゃないッ?」

「もお閉めてよオオオオオオオ!!!」

と無礼千万にも筆者をなじり、あざけり、侮蔑するコイツに

言い返す、という不毛の儀式を日課とすることを

余儀なくされている次第である。



特に筆者を立腹させるのは:

「まアた甘いもの?!」

および

「開アけすぎじゃないッ?」

の2フレーズである。



「まアた甘いもの?!」

の、筆舌に尽くしがたいまでにこちらをバカにしきった口調・・・・・!!!

ああ、聞いてもらいたいぐらいである。

この録音に関与した演出者およびそれにOKを出したメーカーの責任者の

二名と筆者の気が合わぬことはゼッタイのゼッタイに間違いない。

たかがオモチャにあそこまでユーザーをディスらせるとは、

どういうつもりなのか。

しかも!!しかもだ!!

筆者の冷蔵庫には甘いものなどほとんど入っていないのに、

である!!!

これに対しては

「これは塩サバなんじゃ!塩サバ塩辛いんじゃボケ!!」

のように返す。



「開アけすぎじゃないッ?」

については、ご丁寧にも、ご丁寧にも、末尾に

「あきれかえってもうこれ以上言葉もありませんわ。」

を表す小さな溜息が入れてあるのだ!!!

ム・カ・ツ・クーーーーーー!!!

この録音に関与した声優とも筆者、ゼッタイのゼッタイに気が合わぬ。

演出に従っただけかもしれないが、

筆者にはこんな言い方、演出されてもできはしない。

筆者にはないものだからである。

”開けすぎ”

”開”

”け”

の間を伸ばすなんて、伸ばして

”開アけすぎ”

にするなんて! しかも最後にあるかなしかの、

それでいながらユーザーに気づかさずにおかぬ溜息を付けるなんて!!!

筆者には思いもつかぬ侮蔑テクニックである。

これに対してはもっぱら

「開けすぎてへんワあほんだら!!」

と返すが、罵倒に対抗するに際しての己の言語力の

貧困さに情けなくなるのと合わせてダブルパンチである。



そして、

「解ォけちゃーうよオオオオオオ!!」

「もお閉めてよオオオオオオオ!!!」

では、ヒステリから始めて泣きに入ってゆく過程が

この短いフレーズの中にものの見事に表現しきってある。

あまりにもムカつくので、

ずーっと開けっぱなして苦しめたろか!!

という衝動に駆られるが、

冷蔵庫をずーっと開けっぱなしたら苦しくなるのはコイツではなく

筆者自身に他ならないからいつも泣き寝入りである。



「まァーだココにいてもいいい??」

は、他とは趣を異にしたカワイコぶりっこ口調であって、

これはこれでやはり非常にムカつくが、いてもらわないと困るから

ダメって言えるはずもなく、返す言葉もない。

これこのように、筆者は常に救われない敗北を味わいながら

冷蔵庫の扉を閉めることになっているのである。



しかも、その後数回にわたって閉めたつもりの背後から

「解ォけちゃーうよオオオオオオ!!」

によって注意喚起され、事なきを得た、ということがあり、

目的が達せられておることから、筆者は

「嫌いなヤツに世話になってしまった」

ときのあの苦々しい想いを自宅の台所でものすごくしばしば、

しかも軽々しく味わうはめにまでなっているのである。



バッテリーの消費が早まったことからコイツが死ぬ日も遠くはないはずだが、

そうなれば、また冷蔵庫の閉め忘れを筆者一人で解消せねばならなく

なってしまうのだから、コイツが死んだことを手放しで喜べるはずもなく、

まだ死んでないけど死んでまで勝利し続けることの決定している

憎憎憎々しいコイツなのであった。




オワリ。



(業務連絡)

Y子、でもめっちゃ役立ってるし感謝してるでー!ほんまやでー!

それもこれも全部ほんまなんやー。