グラウンド側の窓際の一番後ろの席。。。

翔也の指定席である。。。

そこからチラッと送る視線の先には

いつもと変わらない香澄の姿が。。。

何事もなかったかのように、まさに普通に

授業を受けている。。。

桂木と香澄はどういった関係か・・・

その二人の写真を撮って去って行った

正体不明の車は誰なのか・・・

だいたい昨日見かけた事を香澄に

言うべきか、それとも桂木に言うべきか

それとも黙って事を見守るか・・・

色々な憶測が翔也の脳裏をよぎる。。。

「あぁ~!!わからん!!」

思わず翔也は声に出してしまった。。。

「おっ!?何だ、相沢!!この公式の

 ドコかわからんのか!??」

数学の教師が珍しく翔也が質問したと

勘違いした。。。

「あ・・・いや、何でもねぇっす」

「試験前だからな!!ちゃんとわかるまで

 遠慮しないで質問しろよ!!」

初めて翔也に質問されたと思い、嬉しそうに

数学の教師が言った。。。

すると浩太が・・・

「何だよ翔也!!大学でも行く気か!??」

と言うと、周りからは大爆笑が起こった。。。

香澄もごくごく普通に笑っていた。。。

モヤモヤ考えてる内に放課後になり

「お~い!!翔也!!帰ろ~ぜぃ!!」

「お、おぉ・・・帰るか」

まぁ、今日のトコはとりあえず大人しく

帰るかと、グループ数人で学校を出た。。。

校門を出て駅に向かい3つ目の角を曲がると

1台の車が前から通り過ぎて行った。。。

その瞬間、翔也はパッと振り返った!!

そう、昨日のあの車である。。。

「悪い!!みんな、先に行っててくれ!!」

「お、お~い!!ど~したんだよ!??」

仲間の声を振り切り、前を行く車を猛ダッシュで

追いかけた。。。


つづく。。。 



香澄と桂木は二言三言話して少し離れて

同じ方向に歩き出した。。。

翔也は絶句しながらも、このまま帰るワケに

行かず、後を追った。。。

教師と生徒。。。

ドラマなどではよくあるパターンだが・・・

実際目の当たりにすると複雑な気分だ。。。

「おいおい・・・とんでもねぇ課外授業だな。。。

 援交か??

 それとも脅されてんのか??

 それとも付き合ってんのか??」

色んな妄想が翔也の頭を駆け巡った。。。

先頭に桂木、その10メートルほど後ろに香澄

またその10メートルほど後ろに翔也。。。

しかし・・・

何と翔也以外にもこの二人の様子を黙って

見つめる男がいた。。。

その事をまだ誰も気づいてない。。。

しばらく歩いていくと桂木はとある建物の前で

止まった。。。

ホテルである。。。

桂木は辺りを見回した後、香澄を手招きして

ホテルに入って行こうとした。。。

「ウソ・・・マジかよ!?

 あのヤロォ!!」

チンピラにしては正義感の強い翔也はこの

事実を許せずに、二人を止めようと道路を

渡ろうとしたその瞬間!!

1台の車が目の前に急停車し、翔也の行く手を

遮った。。。

「ちょっ・・・何だよ!?この車!!」

と思ってると、その車の中からフラッシュが数回

香澄と桂木に向けられた。。。

二人は丁度自動ドアが開いて中に入ろうと

してたので、このフラッシュには気づかなかった。。。

そしてその車は、時間にしてものの数秒で

走り去って行った。。。

走り去る車を目で追ったら、今度は二人の方に

目を向けると、もうすでに二人はホテルの中へ

消えた後だった。。。

「おいおい・・・一体何なんだ!??コレは・・・??」

翔也は一人ワケがわからずその場に呆然と

立ち尽くしていた。。。


つづく。。。




時間は夜の9時を回っていた。。。

街の片隅にある全く人気の無い

公園で一人考えてた。。。

「先公なんざ別にどぉって事ないけど

 おっちゃんとおばちゃんには

 悪い事したな。。。」

昼間二人に取った態度をちょっとだけ

反省していた。。。

「ま、毎度の事か!!」

帰るのに多少後ろめたい気持ちはあったが

いつまでもここにいても埒が明かないので

施設に帰ろうと歩き出した。。。

するとその時・・・

見覚えのある人影が目の前を通り過ぎた。。。

「お、香澄じゃん・・・」

同じクラスの女子生徒、芹沢香澄である。。。

クラスの女子の中でも男子に人気のある方で

翔也とも割と仲が良かった。。。

バスケ部の時期キャプテン候補と

言われるくらい活発で、その一方

生徒会にも属しており、素行の悪い翔也達の

グループはいつもこの香澄に怒られていた。。。

どうやら誰かを待っている感じで、携帯を手に

辺りをしきりにキョロキョロしていた。。。

「お~い、かす・・・」

翔也が声をかけようとした所に一人の中年男性が

現れ、香澄の肩をポンポンと叩いた。。。

「ん??オヤジさんか??」

暗くてよく見えない。。。

二人で同じ方向に歩き出し、自動販売機の灯りが

その中年男性を照らしたその時!!

翔也は目を疑った。。。

その中年男性とは、バスケ部の顧問の

桂木だったのである!!



つづく。。。

担任と学年主任に囲まれて校長室に

入ると、そこには校長と教頭と一緒に

60過ぎくらいの老夫婦が座ってた。。。

翔也が子供の頃から世話になってる

施設の寮長夫婦である。。。

「おっちゃん・・・おばちゃんも・・・」

翔也に両親はいない。。。

幼稚園の頃に事故で亡くしたのだ。。。

兄弟もなく、親戚の家をたらい回しにされた

挙句、小学校に上がる頃にここの施設に

入れられたのだ。。。

おもむろに担任が声をかけた。。。

「相沢・・・いつまでこのお二人に

 迷惑かけるつもりだ??」

「・・・」

「昨日も乱闘騒ぎ起こしたんだって??

 相手の数人が大怪我したらしいぞ」

「知るか・・・

 先に向こうから手ぇ出してきたんだよ。。。

 しかも向こうは8人いたんだぞ。。。

 怪我くれぇ大した事じゃねぇよ。。。」

「先方もそれは認めてる。。。

 だから事件にはしないと言っているが・・・

 ただこれ以上同じ事繰り返してると学校の

 方としても黙っとくワケにいかんぞ!!」

「先生方、この子は乱暴ではありますが

 ホントは真っ直ぐな優しい子なんです。。。

 何とか許していただけないでしょうか??」

寮母が立ち上がり先生達に深々と頭を下げた。。。

「いいよ、おばちゃん!!謝る事ねぇって!!

 先生よぉ、俺は別に退学でもいいんだぜ??

 そっちがやめさせにくいんだったら、いつでも

 こっちからやめてやろうか??」

「ダメよ!!退学なんて!!ホラ!!謝りなさい!!」

「いいつってんだろぉが!!」

イスを蹴り上げ、大人達を睨み付けた。。。

「やめてほしいんだろ??

 だったらやめてやるつってんだよ!!」

そう言うと翔也は校長室を飛び出し、そのまま

早退した。。。


校門を出る時、1台の車が止まってた事に

翔也は気づかなかった。。。

この車の中の人物が後に翔也の人生を

大きく変化させてしまう事を、この時は

まだ知る由もなかった。。。


つづく。。。



 

「翔也!!昨日北高のヤツ等とやり合ったんだって??」

「8人いたらしいけど、大丈夫だったか!?」

昨日の大立ち回りを同じ学年の不良グループは

すでに知っていた。。。

男の名は相沢翔也。。。

都立波沢高校の2年で、校内の3年生はもちろん

都内の高校の不良と呼ばれる連中の中では

すでに知らない者はいないくらい名が通っている

筋金入りのワルである。。。

「悪いな、翔也。。。俺がやられたばっかりに」

クラスメートの浩太がバンソーコだらけの顔で

申し訳なさそうに声をかけた。。。

「いいよ、気にすんな」

笑顔で返事する翔也。。。

ここ最近の北高とのケンカはこの浩太が北高の

連中ともめた事から始まっていた。。。

翔也は自分から決してケンカを売ったりしない。。。

今回もこの浩太の仇を討った形だったのだ。。。

なので、クラスメートの女子達も翔也を怖がったり

していない。。。

むしろその容姿も含め人気ある方である。。。

そして授業が始まろうとする直前に

「おい、相沢。。。ちょっと校長室まで来い」

担任の教師が学年主任と一緒に教室に来た。。。

「お、おい・・・昨日の事がバレちまったのか??」

浩太が不安そうに言った。。。

「大丈夫だって!!ちょっと行ってくるわ」

翔也はまたも笑顔で席を立った。。。

もうこんな事は慣れっこなのであろう。。。

「他のみんなは悪いけどしばらく自習しててくれ」

担任が生徒に声をかけ、翔也を校長室まで

連れて行った。。。


つづく。。。