何も起こらない町に鈴木京香がやってくるお話をU-NEXTで観ました。初見。
監督は竹中直人。予告編集はコチラ。
海沿いにある波楽里というのどかな田舎町が舞台。隊長の津田(竹中直人)をはじめとして、石井(赤井英和)、中江(温水洋一)、富田(塚本晋也)、森下(津田寛治)、松本(浅野忠信)ら波楽里消防分署の隊員たちは、ここ数年火事が全く起こらない町で市民の安全を守っています。非番の日の夜は行きつけのスナック"ハーベスト"にたむろするのが彼らの習慣。そんなある日、東京の大学研究室から蟹の採集にやって来たももこ(鈴木京香)が、伯母の靖代(久我美子)が営む豆腐店に滞在することになって、彼女の美しさに見とれた隊員たちはザワつきます。特に、看護婦への猛アタックに失敗したばかりの石井は、その日からももこに夢中。他のメンバーもしょっちゅう豆腐を買いに訪れて、ももことの接点を作ろうと懸命になります。父(須賀不二男)、亡くなった妻(風吹ジュン)が遺した息子と3人暮らしをしている津田も、ももこが気になっている様子。蟹を獲るために海へ出かけるももこの後を追うように、隊員のほとんどが釣りをし始めたりもします。
ももこの方はというと、隊員の中に心惹かれる人がいる様子はなさそう。ただ、彼らの誘いに気さくに応じて、みんなでクルージングを楽しんだりして、少しずつ交流を深めていきます。子持ちの保険セールスレディ(伊佐山ひろ子)に付きまとわれる富田や、ハーベストのマスター(岩松了)の一人娘(石堂夏央)とイイ雰囲気の松本といった恋模様以外は、ずっと、ももこをめぐる隊員たちのリアクションを楽しむ時間帯が続きます。もちろん、その間も町で火事が起きることはありません。やがて、家の中を荒らされる事件が相次いだり、ハーベストのマスターの一人娘が男と町を出たりする騒動が起きた後、東京の喧騒から離れてリラックスした日々を過ごせていたももこも、この町を去る決意をします。そして、雨の夜。黙って翌日に帰京しようと思っていたももこが消防署を訪れて、たまたま起きていた津田だけに別れを告げて・・・というのが大まかなあらすじ。
劇場公開は1994年11月5日。突如町に現れたマドンナを6人の消防隊員と一緒に観客も愛でるような内容。他の住民が全く近寄ってこないのが不自然なくらいに、全編を鈴木京香の輝きが覆っています。彼らを乗せた消防車が走り出していくエンディングよりも、ももこが雨の中からヌーッと現れてから、最後に後ろ姿で去っていく一連のシーンが本作のクライマックス。彼女に次いで魅力を発しそうな石堂夏央の出番が短めだったのはちょっと残念。小津安二郎的な風景挿入ショットもキレイ。ただ、セリフの掛け合いや間合いをオマージュした遊びの部分はちょっと空回り気味。ビールとバヤリース、原節子の写真も映るし、須賀不二男も小津映画の常連。久我美子の亡くなった夫が岡田英次というところにも、往年の松竹作品(「また逢う日まで」)リスペクトがありました。真田広之、奥山和由、周防正行、松岡錠司とかのカメオ出演もお楽しみ要素の一つ。赤井英和あたりのキャストや、忌野清志郎が手がけている音楽など、竹中直人監督作だからということで集まった人たちを持て余してる感はあるものの、丁寧に撮られた鈴木京香の美しさに大満足の1本でした。

