孤独な大富豪の老人の気まぐれが大騒動を巻き起こすコメディをAmazonプライムビデオで観ました。初見。
監督はダグラス・サーク。アニメーションありの予告編はコチラ。
1928年のニューヨーク。大富豪サミュエル・フルトン(チャールズ・コバーン)は、孤独な老後を送っていて、遺産を相続する家族もいません。そこで、彼が40年前に都会に行くキッカケを作ったミリセント・ブレイズデルという女性の遺族に財産を遺贈することを思い立ちます。片想いだった彼女にフラれたことで田舎を出る決心がついて、裕福な実業家になれたという理屈です。ただ、田舎を出てからウン十年で、彼女やその家族に会ったこともないため、弁護士の提案で偽名を使って彼女の遺族の様子をスパイすることにしたサミュエル爺さん。故郷の小さな町を訪れると、ブレイズデル家は小さなドラッグストアを営んでいました。ミリセントの娘ハリエットの夫チャールズが主人をしていて、孫娘のミリー(パイパー・ローリー)と両想いのダン(ロック・ハドソン)が店員として働いています。ミリーを尾行して自宅を見つけたサミュエルは、下宿人を募集しているという新聞広告を勝手に掲載して、自分が下宿人になると名乗り出て、強引に一室を借りることになります。
突然の爺さんの居座りに戸惑う一家でしたが、前金でもらった家賃は何とかやりくりしている家計の足しになるし、人懐っこい末っ子の孫娘ロバータ(ジジ・ペロー)とペット犬ペニーの温かい歓迎もあって、和やかな下宿生活がスタート。貧しくとも堅実に生きることを信条としているチャールズ。それを受け入れつつも、子供たちにはより幸せになってほしいと願うハリエットは、貧乏店員ダンと付き合う娘ミリーに対しては、ミリーに惚れている資産家の息子カールとくっつけようと躍起になっています。ある日の夜、ミリーがダンとの婚約を電撃発表。大歓迎する家族の中で母ハリエットだけが少し意気消沈。その直後に(実はサミュエルの使いである)紳士が現れて、匿名の人物から10万ドルを相続したとブレイズデル家に小切手を渡します。いきなり金持ちになって大喜びの面々。サミュエルはそんな一家の反応を見ています。すると、母ハリエットがこれからは贅沢三昧に生きると言い出して態度が豹変。ダンとの婚約を解消させるわ、店を畳んで新築豪邸に引っ越すわ、急にハデな暮らしをしはじめた一家にサミュエルは翻弄されることになって・・・というのが大まかなあらすじ。
原題は「Has Anybody Seen My Gal」。『ポリアンナ』で有名な女流作家エレノア・ポーターの『Oh Money! Money! 』が原作。50代の孤独な資産家が会ったことのない遠縁の親戚3人をチョイスして、彼らに匿名で送った大金をどのように使うかをこっそり見守って、最もふさわしい人物に遺産を相続させるという原作の設定を大胆にアレンジしています。「これはお金にまつわる物語です」という前置きで、映画はスタート。田舎での地味な人生を捨てて都会で大成功した老人。田舎にいた若い頃に想いを寄せていた女性は地味な男を選んで結婚しました。自分が歩めなかった世界線で生きる人々は経済的な豊かさとは違う価値観で幸せに暮らしているのではというかすかな希望を抱いて、女性の遺族が暮らす田舎を訪問。下宿人となった後にドラッグストアの店員として薄給で働く風変りな老人として遺族の生態を観察します。裕福じゃなくても慎ましく暮らす一家に自分が持ち得なかった家族の温もりを感じたものの、大金を手にした途端に人が変わってしまう姿を目にすることにもなります。
お金しかない爺さんが他人の家族に介入して、独りよがりな施しで一家をメチャクチャになってしまうという、金がもたらす不幸な話のはずなのに、その毒気が背後に隠れてしまって、映画全体が多幸感で溢れたテイストになっているのがなんとも不思議。OPクレジットがイラストで、ところどころにミュージカル調の楽しい場面もあり。積年の僻みが爆発して成金マダムを満喫しようとする母に釣られて、金満生活に染まっていく家族たち。自分で種を撒いたくせに、サミュエルは状況を改善させようと奔走。特に、純粋に愛し合っているミリーとダンの関係を修復させようと奮闘します。偏屈なケチのようでいて、人情味のある好々爺を演じるチャールズ・コバーンの存在感が絶妙。子役のジジ・ペローとワンちゃんもキュート。禁酒法時代なので、ドラッグストアはソーダファウンテンも設置された社交場にもなっていました。その客の1人でジェームズ・ディーンが出ていたことにもビックリしました。

