「安珍と清姫」(1960)

 

クソマジメな坊さんと勝ち気なお姫さまの悲恋物語をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は島耕二。予告編はありません。

 

舞台は紀州。ある日、真砂の里の庄司清継(見明凡太郎)の娘清姫(若尾文子)がキツネ狩りに興じていた時、清姫の弓矢が道成寺への参籠に出かける道中だった修行僧安珍(市川雷蔵)の左腕に命中。清姫は安珍たちを屋敷へ連れて帰ります。安珍と同行していた道覚(小堀阿吉雄)が女中に色目を使う俗物であるのに対して、負傷した安珍は介抱しようと近づいてきた清姫の親切心を修行中の身ゆえと言って断固拒否する姿勢を崩しません。沢山の男たちに求婚される美貌の持ち主である清姫は、安珍のそっけない態度が気に食わない様子。しばらく経った火祭りの夜、道覚は女中の早苗(毛利郁子)と庄司の屋敷にあった金を奪って夜逃げします。一方の安珍が近場の小さな温泉で治りかけた体を癒していると、おもむろに全裸になった清姫急接近2人で幸せに踊りたいという乙女の恋心を語ると、安珍も御仏に仕える身でなければ喜んであなたを受け入れると告白。すると、清姫はとうとう男の本性を現したなと言ってケタケタ笑い出します。煩悩に負けた安珍はさらなる修業に励むべく、道成寺へと向かいます。

 

一方、安珍の心を弄んだ清姫はちょっと反省。かねてから求婚していた関屋の長者友綱(片山明彦)が真砂の里へ水を引くことを条件に嫁入りしろと申し入れているパワハラ縁談も頑なに拒否。そして、友人の桜姫(浦路洋子)から修業に打ち込む安珍の近況を聞いて、自分の愚かさを反省滝行に勤しむ安珍を電撃訪問します。一度は拒絶する安珍でしたが、身投げする覚悟でやって来た清姫と一夜を過ごします。でも、翌朝になってやっぱり後悔した安珍は清姫に黙って、どこかへ消えてしまいます。失意のまま屋敷に戻った清姫は、友綱との縁組みを勧める父に安珍への愛を告白してまた家出。安珍も苦悶の末に、もう一度清姫のいる真砂の里に向かっていました。2人が再会しそうになった時、村全体の幸せのために友綱との結婚を選んだ清姫に会わないでほしいと清継の下僕に言われて、観念した安珍はやむなく道成寺に戻ります。また会えずじまいの清姫が帰宅すると、娘の想いを無視して無理に縁談を進めた責任を取った父が自殺していました。自分の好きな道を歩めという遺言を読んだ清姫は、もう一度安珍を追い求めるも・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1960年8月9日。同時上映は山本富士子主演の「夜は嘘つき」。歌舞伎の『娘道成寺』にもモチーフにされている安珍・清姫伝説を小国英雄が脚色した一品。安珍に裏切られたと思った清姫が大蛇に化けて、安珍のいる道成寺ごと焼き払うというあらすじだけは何となく知っていました。本作にはいくつかアレンジが施されています。なんといっても、主人公を雷蔵と若尾文子が演じているのが最大の見どころ。雷蔵は仏の道を精進したいだけなのに、美女に一方的に迫られてずっと苦悩する役どころ。相手が若尾文子なら悩んで当然です。安珍を何となく気になる程度の存在に思っていただけの清姫も、自分の浅はかさに気づいた時に真の愛情が生まれていることにも気づきます。未練を絶ち切って道成寺に徒歩で向かう安珍に猛スピードで追いつくも、振り切られてしまった清姫は絶望して身投げ。すると、突如雷鳴が轟いて、道成寺で祈りを捧げていた安珍は気絶。そこからは特撮映画になって、大蛇となった清姫が道成寺に向かってニョロニョロと突進。娘が身投げしたと聞いた安珍は清姫に違いないと言って暴れ出します。そんな安珍の暴走を治めるべく、鐘に閉じ込める坊さんたち

 

ようやく、道成寺に到着した大蛇は女性の姿に変身キツめのメイクをした清姫が急に現れて、坊さんたちはビックリ。清姫が鐘の周囲を一周して長い紐を落とすと、また大蛇に変身して鐘に巻きつきます。大蛇は口から火を噴いて寺全体を焼き尽くす、といった夢から目覚めた安珍は坊さんたちの制止を振り切って、道成寺を飛び出して清姫が身投げした川へと向かいます。息絶えてしまった清姫を抱きしめた安珍は、これからずっと傍にいて冥福を祈り続けると誓って、そのまま本当のお姫様だっこをして去って行く姿で映画は終わります。勝ち気な姫が一転して一途になる心情変化の過程の描き方がアバウトなところと、真砂の里と道成寺がどのくらい距離を隔てているのかが分からないために追跡劇部分の苦労が伝わりづらいのは難点。間接キスを暗示する笛のアイテムは効果的で、時折映る大自然ロケーション魅力的坊主頭の雷蔵には清貧の色気があって、若尾文子は若尾文子史上では中くらいの美しさでした。あと、本作は若尾文子のあられもない姿が一瞬映ることでも有名らしく、しっかりと拝ませていただきました。