金子正次の遺稿シナリオの映画化作品をAmazonプライムビデオで観ました。初見。
監督は高橋伴明。予告編は見つかりませんでした。
ある夏の日。関東で一大勢力を誇る坂上連合の傘下にある『村井組』の下っ端ヤクザの松永勝(哀川翔)は、いつもつるんでいる荒川(そのまんま東)とくすぶった日々を送っています。海水浴場でバイトをしていた時に、家族連れで訪れた男(的場浩司)の男っぷりの良さにたじろいだ勝。家族との会話で彼が同じ生年月日であることも知ります。この男は、坂上連合と対立する川田組の武闘派集団『大日本極真会』に属している修。これが、のちに互いの運命が交差していくことになる2人の最初の出会いでした。勝が行きずりの智子(香坂みゆき)と寝て、運命を感じたのもこの頃。一方、修は川田組からカタギを強制されている橋本会長(白竜)の想いを汲んで、独断で村井組に手榴弾を投げ込んで、勝手に坂上連合へ戦争を仕掛けます。これに反応したのが勝。こちらも独断で橋本会長宅を銃撃する騒ぎを起こしますが、翌年夏に出所すると状況は一変。勝の侠気を気に入った坂上一家総長(岡田英次)直々のご指名で、総長直属のボディガードへと大出世します。
ずっと会えないでいた智子と再会するも、しょーもないおっさんの愛人に成り下がっていたことに幻滅して別れます。修はというと、自分の暴挙で立場が危うくなった橋本会長を暗殺されてしまいます。これを坂上連合の仕業だと思った修は、坂上総長襲撃を決行。一命こそ取り留めたものの、自分が目を離したスキに総長の命を危険に晒した勝はエリートコースから脱落してしまいます。修は川田組の計らいで隠遁生活を送ります。ただ、坂上連合との関係を修復するために武闘派の大日本極真会を潰すべく、川田組の刺客が橋本会長を暗殺したことを修は知りません。やがて、修自身も同じ刺客に殺害されます。坂上総長の命を狙った男を自分の手で始末することでケジメをつけることだけに執念を燃やしていた勝は目的を失います。その時、改心して身を持ち直していた智子とまた再会。最後の夏、2人で穏やかな生活をすることを待ち望む智子を置いて、勝はやり残した仕事を果たしに行くのであった・・・というのが大まかなあらすじ。
劇場公開は1991年1月12日。Vシネマ臭の強い2人の主人公がとても良かったです。チャラさと真っ直ぐさを併せ持つ哀川翔。無骨な義侠心丸出しの的場浩司(遺骨かじり!!)。ヤクザなりの論理でヒロイックに行動しつつも、理不尽に妻を殴って耳が聴こえなくしてしまうクズっぷりも描いてるところが良いです。獅子座生まれの2人が直接会ったのは序盤の海水浴場だけという設定がユニークで、それぞれが自ら渦中に飛び込んでいって犬死する展開。どこまでが金子正次の脚本なのかは分かりませんが、不器用でやるせない雰囲気は「竜二」(1983)にも通じています。星座占いやかき氷、腕時計などのキーアイテムに情緒を持たせてる小技も効いてます。修の兄貴分の中西良太、川田組が派遣した殺し屋の下元史朗、献身的な妻を演じる七瀬なつみは映画世界に馴染んでいて、ヤクザ映画に似つかわしくない香坂みゆき(オッパイ)と風見しんご(シャブ中)とそのまんま東(意外に好演)の出演にもお得感あり。原田芳雄、陣内孝則、仙道敦子、高橋惠子、布川敏和、国生さゆりなどのカメオ出演も昭和世代にとっては豪華でした。



