「オペレッタ狸御殿」(2005)

 

鈴木清順の遺作となった狸御殿モノをふと観てしまいました。初見。

 

 

監督は鈴木清順。予告編はコチラ

 

がらさ城城主の安土桃山(平幹二朗)が手下の予言者であるびるぜん婆々(由紀さおり)から「この世で最も美しいのは、息子の雨千代(オダギリジョー)だ」と聞いて激オコ。全てにおいて自分こそが至高と信じている安土桃山は、かつて妻を追放した時と同じように雨千代を霊峰と呼ばれる快羅須山へ追放するように命令。その陰謀からなんとか逃れた雨千代がさまよっていると、唐の国からやって来たという狸姫(チャン・ツィイー)と出会います。狸姫に誘われて狸御殿に招かれる雨千代。しかし、狸と人は恋をしてはならないという御法度があり、自分勝手な狸姫の身を案じた狸御前のお局様のお萩(薬師丸ひろ子)は雨千代を牢屋に幽閉します。

 

狸御殿では毎日が祝祭で、いつも狸姫の誕生日ではない日を祝う宴開かれています。牢屋を出た雨千代は狸姫と一緒に踊って歌っているうちに、恋に落ちていきます。一方、雨千代探しに懸命なのは、がらさ城陣営。びるぜん婆々の命を受けた駝鳥道士(山本太郎)が狸と間違われて農家に囚われたため、びるぜん婆々が自ら行動に出ますが、お萩とのジャンケン対決に負けて華麗に爆死。続いて、安土桃山自らが狸姫の命を狙って、助けに来た雨千代を庇った狸姫意識不明の状態に。狸姫の命を救うには"極楽蛙"の鳴き声を聞かせるしかないことを知った雨千代は命を賭して極楽蛙がいる快羅須山へ向かうのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は2005年5月28日。シュール系ファンタジー作品の脚本で知られる浦沢義雄とのコンビ作。1980年代から構想されていたそうです。当時の拙いCG技術を多用して狸御殿モノにチャレンジしたのが本作。「白雪姫」や「ロミオとジュリエット」などのテイストも織り交ぜて、ほとんど中国語でしゃべるチャン・ツィイーオダギリジョーの恋愛物語が繰り広げられます。とてもフォトジェニックですが、二人がそんなに惚れ合ってるようには見えないため、恋の行方を応援する気持ちがあまり湧きません。物語を追うというより、ロケ撮影舞台風抽象的なセットデジタル処理された映像と目まぐるしく変わる様子をただ素直に受け入れるのみ。

 

歌のパートは芸達者な平幹二朗と由紀さおりが牽引。薬師丸ひろ子の清らかな歌声もGOOD。もう少し時代が早ければ、タヌキ顔の薬師丸ひろ子主演でも良かったかも。元歌手だと知らなかった高橋元太郎の歌いっぷりにもビックリ。トドメに、CGの美空ひばり光の女人役で特別出演。他に篠井英介、市川実和子、永瀬正敏、パパイヤ鈴木等も出演。コメディリリーフ的存在の山本太郎のパートは、まるまる不必要に感じました。あと、子役の豆狸トリオがとてもキュート。いずれにせよ、作り手の労力や遊び心を忖度してあげる感覚が必要で、鈴木清順?誰それ?という人にはナニコレ?となる作品かと思います。