「艶説 明治邪教伝」(1968)

 

セックス教団騒動を描いたピンク映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は土居通芳。予告編はありません。

 

明治初期の片田舎のお話。生殖器を崇めるお祭りが行われている村に、流れ者の武次郎(高橋昌也)が参上。海辺で出会った女を誘惑して、すぐにチョメチョメする色男です。この村に彼を呼んだのは、宿を営む伝兵衛(金子信雄)。古びた寺を乗っ取って新宗教を始めてひと儲けをしようと思い立った伝兵衛にとって、イケメンで口も上手い武次郎は女人救済のセックス教団の教祖にふさわしい人物だと見込んだからであります。まず、2人は寺を守っていた老いた堂守を自殺に見せかけて殺害。寺に「立川教本部」の看板を掲げて布教を開始すると、性に飢えていた村娘たちが一斉に押し寄せて信者になります。その中には武次郎が海辺で抱いたおきん(内田高子)もいました。蛇取りを仕事にしている彼女は、妹のおぎん(葵三津子)と共に村人から"魔性の女"と忌み嫌われていました。自分たちをオンナとして扱ってくれる武次郎におぎんも恋するようになっていきます。

 

そんなある日、堂守の孫娘お恵(金井由美)が祖父の死の真相を知るために村にやって来ます。同じ頃、蒸発していたおきんの亭主藤七(内田良平)も帰ってきます。いい女に成長した妹おぎんに襲いかかるのを止められた藤七は、嫌がる妻のおきんを犯します。プレイ後におきんが妊娠していることを知った藤七は激高。こんな村からもう出たいと思ったおきんは武次郎に相談。自分の子を腹ごもっていることを知って堕胎させようとするも、おきんの父が掘り当てた砂金を隠し持っていることを聞いた武次郎は隠し場所の洞窟に同行。そこに藤七が現れて間男の武次郎を銃殺しようとした時、背後にいた伝兵衛が藤七を撲殺砂金を奪い取った伝兵衛はおきん姉妹を洞窟に閉じこめます。その後、祖父殺しが発覚する前にお恵も殺そうとした伝兵衛は、洞窟から脱出したおぎんが放った毒蛇に襲われて死亡。続いて、お恵の通報を受けた警察がもう1人の容疑者である武次郎を追跡。助けるふりをして山中に誘導したおぎん武次郎にも毒蛇を放って・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1968年7月10日。同時上映もピンク映画の「女浮世風呂」。インチキ宗教で稼ごうとする悪党2人と村八分にされている美人姉妹を中心に繰り広げるエロティックカルト教団狂騒曲。村全体が貧しそうなエリアで新興宗教を開いてもボロ儲けはできない気もしますが、年に1度のお祭り後の夜這いだけが楽しみの村民たちが新宗教にすがりたくなる気持ちも分からなくはないです。現存する宗教の中にも、この程度の邪心から始まって大きく成長した奴らもいることでしょう。信者たちのルーティンは、念を唱えて、半裸で踊って、全裸になって、水で清めてといったシンプルな内容。掲げているフラッグも教団のイメージを端的に表現した素敵なデザインです。教祖に高橋昌也、幹部に金子信雄という布陣なら、高確率で悪巧みが成功しそうですが、村民に虐げられていた姉妹が彼らの前に立ちはだかります。

 

最初は教祖を信じて愛していた姉妹も隠し財産を奪われた挙句に洞窟に閉じ込められて、脱出しようとした崖滑り落ちた姉おきんが志半ばで死んでしまいます。2人で力を合わせて復讐すると思っただけに意外な展開。でも、1人残ったおぎんが金子信雄と高橋昌也を子飼いの毒蛇で殺害して、見事にリベンジ成功してジ・エンド。女優陣では、淫靡な色気を放つ内田高子より、健康的なセクシーさのある葵三津子と清楚な金井由美の方が個人的には好みでございました。他には、女性信者目当てで入信するおっちょこちょいのコンビとして、リーガル天才・秀才がたびたび顔を出します。あと、この釣り橋のロケ地がどこなのかがとても気になりました。監督の土居通芳は、傑作「地平線がぎらぎらっ」(1961)やTVドラマの長谷川伸シリーズ「関の弥太っぺ 前編・後編」の演出も良かったですが、奇抜な設定の本作も珍品として十分に楽しめました。