「豹は走った」(1970)

 

加山雄三主演の東宝ニューアクション映画を久々に観ました。

 

 

監督は西村潔。予告編はありません。

 

南ネシア共和国でクーデターが発生。ジャカール大統領は日本軍の残党と深い関係にあり、大統領に軍需物資の支援をしていた大日本物産はジャカール大統領のアメリカに亡命する手引をして、日本に入国させます。商魂たくましい大日本物産社長(中村伸郎)は裏で革命政府側とも交渉して、ジャカールを暗殺して武器取引を継続する手筈を整えます。どちらの政府が勝ってもビジネス的には成功となるわけです。社長の命を受けた美人秘書の薫(加賀まりこ)国際的な殺し屋の九条(田宮二郎)を雇います。大統領が東京に滞在するのはわずか三日間。一方、国内での暗殺をなんとしても阻止したい警察は、射撃のオリンピック選手だった戸田警部(加山雄三)密命を与えます。彼をいったん解雇して、警察外部の人間として暗殺者の暗殺をさせるというもの。さっそく大統領が滞在するホテルを怪しく嗅ぎまわる戸田。悪目立ちしすぎです。

 

九条もそのホテルに宿泊して、暗殺のチャンスを伺っています。さらに革命政府が直接雇った刺客も次々と大統領の命を狙っていて、戸田九条以外の敵始末しなければなりません。その間、金髪女ナンシーをナンパしてホテルに連れ込む余裕を見せる九条。革命政府の刺客九条と戸田の三つ巴の闘いが水面下で激化していく中、戸田も九条も互いの存在を認知。しばらくして、娼婦を部屋に呼んだ大統領を遠くのビルから撃ち抜いた九条。と思いきや、撃たれたのは大統領の部下でした。その後、暗殺未遂現場にしゃしゃり出てきたナンシーを戸田が誤って射殺。怒った九条が戸田の車を追って射殺するも、死んだのは戸田の使い走りをしている平松刑事(高橋長英)でした。けっこう失敗ばかりする二人は身近な人物を殺されて憎悪がヒートアップ。大統領が旅立つ日にいよいよ直接対決となったわけですが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1970年4月4日。同時上映は中平康監督の「栄光への反逆」。日本人殺し屋とそれを阻止する刑事という荒唐無稽味の強いアクション映画。昭和的なハードボイルド感が満載です。主演の加山雄三は終始かったるそうな表情を浮かべていて、少し精彩を欠き気味。キザ担当は田宮二郎。流暢な英語でバーで拾った傷心の女を口説き落とすダンディーぶりが非常にサマになっていて、フィクショナルな世界に一定のリアリティを与える名演技。最後の対決では勝つか思いました。そして、オシャレ担当は加賀まりこ。コシノジュンコの衣装を身にまとって、男たちの争いをクールに見守ります。好敵手2人とは会話を交わすのみで恋愛関係には発展せず、ファッションアイコンのお飾りとしてしか機能していないのは残念。クールな画面構成とジャジーな音楽、へのこだわり靖国神社新宿駅前横田基地付近外国人バー(黒沢年男がカメオ出演)といった当時の風俗描写などがとても興味深い一品でございました。