「HOW TO BLOW UP」(2022)

 

環境破壊を許さない若者たちが行動を起こす映画をシネマート新宿で観てきました。

 

 

監督・脚本はダニエル・ゴールドハーバー。予告編はコチラ

 

冒頭で、路上駐車の車のタイヤを切り裂いて、「法律が裁かないなら私が裁く」と印字されたメモを残して去っていく女性。彼女はソチ(アリエラ・ベアラー)という女子大生で、環境NGOの活動家。石油精製所近くで生まれ育ったソチは、気候変動による異常熱波が原因で母を亡くしたばかり。平和主義的抗議活動に限界を感じて、破壊行為で資本家に大打撃を与えて警告するしかないと決心。環境ドキュメンタリー制作に関わる友人のショーン(マーカス・スクリブナー)と一緒に行動する仲間集めを開始します。まずは、同じ地区で育ったソチの幼なじみのテオ(サッシャ・レイン)仲間入り。石油精製所から排出された有毒化学物質のために白血病だと診断された彼女。貧困ゆえに延命医療を受けることができず、余命わずかであることを覚悟していますテオの彼女であるアリーシャ(ジェイミー・ローソン)は、最初こそ反対するものの、最終的にテオと共に計画に参加することを決意。

 

つづいて、マイケル(フォレスト・グッドラック)が加入。原油採掘業者に居留地を奪われたネイティブアメリカン出身のマイケルは独学で爆弾作りをはじめて、その製造過程をYouTubeなどで公開していた青年。そして、環境活動家のカップルであるローガン(ルーカス・ゲイジ)とローワン(クリスティン・フロセス)も合流。さらに、パイプライン建設のために土地を奪われたドウェイン(ジェイク・ウィアリー)。ターゲットとなるテキサス州のパイプライン近くに住む彼が地元に精通する者としてスカウトされます8人の若者たち人里離れたテキサスの廃屋に集まって、パイプライン爆破の準備をスタート。共同作業は順調に進んでいくように思えますが、8人の中には、今回のテロ行為の情報をFBIに売ろうとしている人物が紛れています。いよいよ決行当日。はたして、彼らの大胆不敵な計画は予定通り実行されるのか・・・というのが大まかなあらすじ。


原題は「How to Blow Up a Pipeline」。"パイプラインを爆破する方法"という意味。原作も同じタイトルで、スウェーデンの環境活動家アンドレアス・マルムによる「環境を破壊する営利活動をしているヤツの財産を破壊することが気候変動を抑えることにつながる」というラディカルな提言書をベースに、志を持った若者たちがテロ行為に踏み切るストーリー仕立てに構成した内容。環境問題には一家言あるとはいえ、テロリストとしては素人であるため、爆弾を無事に作れるのか所定の位置にセットできるのか、で、実際に爆破するのかというサスペンスがあります。犯行の手順をテキパキと描写しながら、登場人物のバックボーンをほど良いタイミングで挿入して、各人の犯行動機も少しずつ明確になっていく流れも明解で、仲間を集めてミッションを遂行する犯罪集団モノ映画の教科書のような作り。

 

無駄のないタイトな構成で緊迫感を上手く保っている一方で、テロ行為を阻止しようとする勢力がほとんど出てこないことは本作の難点。彼らが捕まるかどうかというサスペンスはほぼなし。FBIは犯人の一人を別件逮捕で事前に捕まえていて、爆破テロに参加している様子をケータイで報告させていますが、犯罪が実行されるまで全く動きません。追う者と追われる者との攻防こそが犯罪映画の醍醐味なのに、バッサリ切っている点はインディーズ映画らしい割り切りなのかも。主演格のソチを演じる女優さんが地味な存在感だなと思ったら、共同脚本に名を連ねているようです。テロ行為は結局失敗するのかと思いきや、彼らが想定した通りの展開になっていくのが意外でした。「爆弾を作る者の半分は、自分で作ってる時に自爆する」というセリフがとても印象的。アバウトな性格の私が爆弾を作ったとしたら、ほぼ100%の確率で自爆すると思います。