「世紀の取り引き」(1983)

 

武器商人のブラックコメディをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はウィリアム・フリードキン。予告編はコチラ

 

レーガン政権下のアメリカ。武器商人たちが世界各国に売り込んでいて、政情不安定な軍事独裁国家は格好の標的になっています。最新型無人戦闘機『ピースメーカー』を擁するラックアップ社もその一つで、"サンミゲル国"への積極セールスを展開中。同じ頃、個人で武器セールスを行っていたエディ・マンツ(チェビー・チェイス)も、サンミゲルでちっぽけな武器をセールス中でした。政府と戦う反乱軍に武器を納入するタイミングで、政府軍のヘリ襲撃。自身は左足を負傷して、取引はパーに。その後、ホテルの別部屋に宿泊していたラックアップ社のハロルド(ウォーレス・ショーン)と出会いますが、ピースメーカー売買契約がなかなかまとまらずにノイローゼになっていたハロルド拳銃自殺。その直後にサンミゲル国首脳からハロルドの部屋に売買契約の電話がかかってきます。エディはハロルドの後任のフリをして、3億ドルの売買契約にこぎつけることに成功して帰国します。

 

しかし、ラックアップ社が米軍幹部にピースメーカーのテスト飛行をデモンストレーションしている時に、実機が制御不能になって建物を爆破してしまいます。そのせいで、サンミゲル国との売買契約も解除されたエディ。さらに、ハロルドの未亡人キャサリン(シガーニー・ウィーバー)に夫を殺したのはお前だと銃を突きつけられて、暴発した弾丸が左足を撃ち抜きます。しばらくして、入院中の病室にラックアップ社の重役フランク(ヴィンス・エドワーズ)が訪れて、会社の窮地を救うためにサンミゲル国にピースメーカーを再度売り込んでほしいと懇願しに来ます。多額の報酬を条件に了承したエディは、相棒のレイ(グレゴリー・ハインズ)と協力して売り込み作戦を開始。エディといい雰囲気になったキャサリンもチームの一員として参加することになります。そして、兵器博覧会視察のために来米するサンミゲル国将軍への接待作戦実行するのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Deal of the Century」。邦題はそのまんまです。日本では劇場未公開。「恐怖の報酬」(1977)での商業的失敗以降、雇われ監督に成り下がっていたフリードキンの雇われ仕事の1本。脚本を書いたポール・ブリックマン監督予定が変更となったため(同時期に公開されて大ヒットした監督・脚本作「卒業白書」の追加撮影のために降板)の代役で監督を務めたようです。大量殺戮兵器を商売にしている武器商人を皮肉るという大枠は社会派といえるかもしれませんが、内容自体は大味なドタバタでした。チェビー・チェイスはボケを抑えた淡々とした演技。同年公開された主演作「ホリデーロード4000キロ」の方は全米で大ヒット。シガーニー・ウィーバーもとりあえずヒロインを無難にやってる感じで、別のSNL出身のコメディアンと共演した翌年の「ゴーストバスターズ」の方は破壊的大ヒット。作り手にも演じ手にもあまりやる気を感じられない本作は、全く目立たない存在として埋没しています。

 

会社のビルが爆発。海水浴中にミサイルが爆発。博覧会場でミサイルが爆発。ハデな爆発があるものの、笑い自体は不発。サンミゲル国の将軍をホテル(日本テイストの作りであるところが当時の日本経済の勢いを感じます)で誘惑したキャサリンに突進するエロチックな場面で、ロケットが発射するシーンを重ねるジョークなんかも古臭くて笑えません。信心深いけどキレるとアブナイ行動を起こす相棒役のグレゴリー・ハインズが、展示されていた戦闘機無断で乗り込んでその暴走を止めるためにラックアップ社がピースメーカーを発進させて、空中ドッグファイトを演じる場面は当時の特殊効果技術の範囲内では頑張っていて、本作の見どころの一つになっています。ムチャクチャなことをした主人公たちも大してお咎めなしで、なし崩し的にハッピーエンドを迎えて映画は終わりました。ショーアップされた兵器博覧会大々的に開催しているところがいかにもアメリカ的だなあというだけ点は非常に興味深く感じた映画でございました。