「とらんぷ譚」(1936)

 

詐欺師の回顧録を描いたフランス映画の古典をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督・脚本・主演はサッシャ・ギトリ。予告編はコチラ

 

54才の男がカフェで回顧録を書いています。村の雑貨商の子供として12人家族で育った主人公。ビー玉を買うために小銭を盗んだ罰で食事抜きの罰を受けた日、家族が食べたキノコが毒入りだったため、自分以外の家族が全員死亡。わずかに残った遺産を管理することになった叔父夫婦に財産を全部取られたため、家を出てホテルのボーイ等をして働き始めます。次の勤め先のレストランで従業員仲間が企むロシア皇帝暗殺未遂事件に巻き込まれた後、モナコでエレベーターボーイを経験。20才上の伯爵夫人に気に入られて初体験。といったことを思い出している時にカフェの隣に座った貴婦人がその伯爵夫人であったりしながら、回顧を進める主人公。

 

3年の兵役後にモナコでカジノのディーラーになったものの、第一次大戦が勃発してまた召集されて戦線に復帰。シャルボニエという軍人が右腕を失ってまで命を救ってくれます。除隊後に再びモナコに戻って近づいてきた美女が宝石泥棒だったことで相棒をさせられた後、ディーラーに戻った時知り合った美女と結婚。コンビプレイで金儲けしようとするも失敗。逆にカジノを破産させてしまって、妻とも離婚。本格的にペテン師稼業を開始して大富豪となった主人公は、カジノで命の恩人シャルボニエと再会。イカサマをしない彼の賭け方に感銘を受けて、イカサマなしでギャンブルを続けた結果、全財産を失ってしまって現在に至っていると書き綴るのであった・・・というのが大まかなあらすじ

 

原題は「Le roman d'un tricheur」。"詐欺師の物語"という意味。邦題の"譚"は"ものがたり"と読むようです。劇作家でもあり、映画の世界でも作家主義の監督として評価の高い人の代表作とされている1本。自身のナレーションで物語は進行していきます。ナレーションを多用する手法がギトリのスタイルのひとつであるようです。タイトルクレジットで本人を登場させてスタッフキャストを紹介する小粋なオープニングで映画はスタート。プラス思考の主人公が成り行きで飄々と小悪党を続けてきた波乱万丈の半生をテンポ良く回顧していくお話。紆余曲折を経て、最後は警察官になっているというちょっとシニカルな結末。軽妙な小咄を聞いたような小気味良い古典でございました。