「トナカイは殺されて」(2024)

 

スウェーデンの先住民族のお話をNETFLIXで観ました。

 

 

監督はエレ・マリア・エイラ。予告編はコチラ

 

北欧の先住民族"サーミ"の血を引く9才のエルサトナカイを放牧する伝統を守る生活をしています。一族は頑なに原始的な暮らしをしてるわけではなく、スノーモービルケータイ等のツールも使っているさまは現代人と変わりません。ある日、自分が可愛がっているトナカイ密漁者惨殺される現場を目撃。しかし、目が合った犯人が怖くて告白できずにいるエルサ。サーミの人たちは自分たちを目の敵にしてトナカイを虐待する輩がいることを何度も警察に訴えますが、本格的に捜査する気配はなし。それから10年後。周辺地域では鉱山開発の動きがあり、企業から説得されているサーミたちは抵抗しています。そのことで失業対策の解決になると考えている近隣住民との間に軋轢が生じてもいました。鉱山開発が始まると、トナカイが暮らす環境への悪影響は免れません。

 

19才になったエルサ(イェリン・クリスティーナ・オスカル)は地元を離れず、学校でサーミの歴史を教える講師もしながら、サーミとしての誇りを持って生きています。かつてエルサのトナカイを殺した男は、今でもトナカイ殺しを続けているものの、殺害の証拠を掴まれてないため、平然としている様子。エルサはマスコミに訴えますが、かえってサーミへの差別が助長される結果を招きます。気候変動による環境激変でサーミとしての暮らしがいつまで続けられるのか、先行きは不透明。経済的な厳しさに耐えられずに自殺した友人もいます。そんな中、虐待男がまたしてもトナカイを殺す現場を目撃したエルサ。男の自宅にある倉庫に潜入したエルサは、吊るされたトナカイの冷凍死体を発見。しかし、虐待男に見つかってしまい・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Stöld」。英題では「Stolen」で、"盗まれた"という意味。邦題のつけ方がザツです。これが長編監督デビューのエレ・マリア・エイラも、主演のイェリン・クリスティーナ・オスカルもサーミ人とのこと。マイノリティ差別をめぐる物語自体はいたってフツーの展開ですが、スウェーデンのロケ映像が圧巻。大自然を戯れる大量のトナカイ映像がひたすら美しいです。死骸もたくさん出てきますが。。。さらに、日常風景としてオーロラが何度も映るオマケつき。クライマックスは、定期的にトナカイを殺している虐待男スノーモービルでチェイスを展開。滑って転んだ虐待男が割れた氷河に沈んで死亡。エルサの報告によって、トナカイの死体がある倉庫をようやく発見した警察が自分たちの手柄だとTVで報告。それを冷ややかに見るサーミたちがいつもの日常に戻って映画は終わります。