「コンクリート・ジャングル」(1960)

 

スタイリッシュな英国製フィルムノワールをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はジョセフ・ロージー。予告編はコチラ

 

刑務所内では顔役的存在のジョニー・バニオン(スタンリー・ベイカー)が出所して、さっそく仕事に復帰。競馬場から4万ポンドを強奪する計画をマイク(サム・ワナメイカー)を含めた仕事仲間に知らせて、あっさりと成功します。ジョニーは強奪した金を誰にもバレないように片田舎のだだっ広い畑隠します。しかし、新しく出来た女スザンヌが待っている自宅に戻ると警察が待ち構えていて、6週間足らずでまた同じ刑務所に逆戻り捨てられた元カノが密告した模様。刑務所にいる馴染みの囚人たちから歓迎されるジョニー。犬猿の仲だった看守バローズ(パトリック・マギー)に冷遇されますが、情報通のベテラン囚人サフランに便宜を図ってもらい、快適なムショ暮らしを再開します。

 

そのサフランからスザンヌがマイクと暮らしている情報を聞いたジョニーは、隠している4万ポンドを渡すなら協力してもいいと持ちかけられます。やがて、刑務所内で起きた暴動の責任を押しつけられて囚人から目の敵にされたジョニーは、別の刑務所に移らざるを得なくなって移送されます。これはサフランの策略で、護送車を襲撃したギャングがジョニーを救出。ジョニーが連れられた先にいたのはマイクでした。マイクとサフランはグルで、隠している4万ポンドをせしめる目的で脱獄させてくれたことを悟ったジョニー。隙を突いて逃走すると、自分を裏切ったと思ったスザンヌも同行。隠し場所にある金を掘り出して二人で高飛びしようとするも、追っ手が彼らを尾行していて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「The Criminal」。"犯罪者"の意味。DVD化されていなかった犯罪映画の秀作ということで初視聴。冒頭、囚人が口ずさむ鼻唄のリズムに乗って長めのワンシーンワンカットで見せる刑務所内の場面からして、グッと画面に引き寄せる演出力がありました。「現金に体を張れ」(1956)に似通ることを避けたのか、競馬場での強奪シーンはスパッと省略。誰がどういう思惑で一連の策略に加担しているのか分からないまま、勢いで押し切ります。全体的にストーリーの面白さより、大胆な構図と流れるようなカメラワークでテンポ良く進行するオシャレさで魅せる感じ。ネクタイ着用の囚人服もCOOL。ジョニーが金の隠し場所を教えないまま息絶えるラストで映画は終わります。

 

ジョン・クリーズをゴツくしたような顔立ちのスタンリー・ベイカーは、最初に007役のオファーがあったとされる人気俳優だったらしく、男尊女卑丸出しの男臭さあり。女の裸がモチーフの美術だらけの部屋に住むオンナ好きですが、刑務所では専属の彼氏を持っていることを匂わすシーンもあり。生粋の悪党なのに信心深いキャラ設定もユニーク。あと、実際の競馬シーン(1962年に閉鎖されたハーストパーク競馬場がロケ地)で、スタート地点がゲートじゃなくてロープ1本なところに時代を感じます。なお、イタリア系の囚人サフランという役どころは、英国南部の競馬場利権を支配していた実在のギャング、チャールズ・サビーニをモデルにしているとのこと。