「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」(1991)

 

「地獄の黙示録」製作過程のドキュメンタリーをU-NEXTでひさびさに観ました。

 

 

監督はファックス・バー、ジョージ・ヒッケンルーパー、エレノア・コッポラ。予告編はコチラ

 

かつて、オーソン・ウェルズが映画化を進めて頓挫(代わりに作ったのは「市民ケーン」)したジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』の舞台をベトナム戦争に変えて作った「地獄の黙示録」。ジョージ・ルーカス監督で進めた企画が頓挫(代わりに作ったのは「スター・ウォーズ」)した後、1976年から開始されたフィリピンのジャングル奥地での映画撮影に同行した監督の妻エレノア・コッポラ。そこで撮影された約80時間のオフショット映像と関係者の録音テープを中心にして、コッポラ本人マーティン・シーンロバート・デュバルデニス・ホッパーフレデリック・フォレストサム・ボトムズローレンス・フィッシュバーンジョージ・ルーカスジョン・ミリアスヴィットリオ・ストラーロらキャスト・スタッフ等のインタビュー映像を交えて、順調に進まない撮影の舞台裏を克明に描いたドキュメンタリー。

 

マルコス大統領の許可を得て軍隊を借りることはできたものの、内戦中で政情は不安定。撮影開始後、いきなり主役のハーヴェイ・カイテルを解雇。代わりにやって来たマーティン・シーンはアル中で、撮影中に心臓発作を起こします。資金や物資調達の困難。台風による悪天候。スタッフの体調不良。次々と襲いかかる災難で撮影中断もしばしば。トドメはハリウッドきってのお騒がせ男マーロン・ブランド。ギャラは1週間で100万ドルの好待遇のくせに、事前に原作小説も全く読まずにデブった体で撮影に参加したため、撮影内容は大幅に修正。結局、撮影期間16週間の予定が4倍に、1300万ドルの製作費も3100万ドルに膨れ上がって、ようやく映画は完成。撮影現場の狂気が乗り移ったかのような異様さを漂わせる作品は興収1億5000万ドルを超えるヒットを記録します。

 

原題は「Hearts of Darkness: A Filmmaker's Apocalypse」。私財を投げ打って映画製作に没頭するコッポラ俳優たちの姿を、妻のエレノアが冷静な視線で見つめる撮影現場の映像が何よりも貴重で、映画本編と同じくらいの面白さがあります。最初の劇場公開バージョンでカットされていたフランス人入植者やプレイメイトのシーンが観られたのも当時は貴重でした。個人的には、特別完全版(2001)やファイナル・カット(2019)の方が映画内世界にたっぷり浸れるので、オリジナル版よりも面白いと感じます。オフショット映像では、家族で撮影見学に訪れて「ジャングル・クルーズみたい!」と無邪気にはしゃいたという当時4歳のソフィア・コッポラがカワイイかったです。