「炎の大捜査線」(1990)

 

香港スター競演のクライムアクションをAmazonプライムビデオでひさびさに観ました。

 

 

監督はチュー・イェンピン。予告編はコチラ

 

熱血警察官ウェイ(レオン・カーフェイ)が育ての親である署長宅で先輩と一緒に食事をして、署長の娘で恋人のフォン(イエ・チュエンチェン)車に乗って帰ろうしたところ、何者かが署長を襲って目の前で殺されます。逃げようとした犯人は逃走用の車に乗った途端に爆発して死亡飛び散った指の指紋から身元を割り出すと、数ヵ月前に処刑された死刑囚だということが発覚。ウェイはわざと傷害事件を起こして、犯人が服役していた「火焼島」という孤島の刑務所に潜入します。新米の洗礼をボコボコに受けながらも、囚人から英雄視される牢名主のクイ(ジミー・ウォング)に気に入られるまでに馴染んでいくウェイ。その刑務所には、脱獄を繰り返す名物男キア(サモ・ハン・キンポー)がいて、しばらくして、ヤクザのピンバル(アンディ・ラウ)の弟を不可抗力で殺してしまったロン(ジャッキー・チェン)も入所してきます。刑務所には囚人イジメを趣味としている看守長がいて、目の敵にしているウェイを懲罰房送りにして楽しんでいます。ビンパルが刑務所に送った刺客がロンを殺そうとしているのも黙認。

 

やがて、なかなかロンを殺せない状況にイラついたビンパルも自ら刑務所に服役命を賭けた決闘に勝ったロンはビンパルにトドメを刺さずに、決闘を見世物にして喜んでいた看守長に怒りの矛先を向けて襲いかかるも失敗。決闘騒ぎを起こしたロンとビンパルは罪が重くなって、死刑を宣告されます。さらには、愛する息子に会いたいキアが数度目の脱獄を図った時、看守を轢き殺した罪で死刑宣告。そして、看守長が囚人に自分を殺させようとしていたことに気づいたウェイも、身代わりに殺された同房の仲間の仇を討って看守長を撲殺したため、死刑を宣告。翌日独房で目覚めたウェイの目の前には刑務所の所長がいました。自分の葬式の写真を見せられて、この世に存在しないことになったことを知り、国が極秘に雇った暗殺者として麻薬組織のボスを無事に始末すれば、新しい身分で人生を送ってもよいと告げられます。ウェイは任務完了後に抹殺されることを覚悟しながら、他の三人と共に指定された場所で死闘繰り広げて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「火焼島」。黒社会にも繋がりのあるジミー・ウォングに強要された香港スターたちが昔の恩義に応える形でやむなく出演させられたというワケありの台湾製犯罪映画。日本ではジャッキー・チェンが主演であるかのように宣伝されて公開。実質的な主役は、潜入捜査をするウェイ刑事役のレオン・カーフェイ。ハデなドンパチのある刑務所群像劇として十分に楽しめる内容ではあります。刑務所の所長が自らの悪事を隠蔽するために、処刑済と見せかけた死刑囚に自分の敵を始末させるという設定。死刑囚たちにはお国のための仕事だと騙して、任務が成功したら殺してしまいます。逃れられない状況に追い込まれて死刑囚が仕事をさせられる様子が、嫌々映画に参加させられているスターたちの境遇とも重なるメタ構造になっている点は奇遇としかいえません。ジャッキーはビリヤードでの八百長を断った報復で恋人が殺されかけて、手術資金を捻出するためにイカサマ博打に手を出す役どころ。

 

息子と会いたくなると脱獄をするサモハンはコメディリリーフ的存在。野外労働時通り過ぎた女性が車をパンクして雨に濡れた胸元囚人に見せつける場面などは「暴力脱獄」(1967)からインスパイアされた場面ですね。囚人の飼っていたペットが殺される場面は「アルカトラズからの脱出」(1979)を連想させます。ジミー・ウォングはサモハンと脱獄した時に死亡軍隊に囲まれた激闘後にいったん爆死回避しますが、サモハンジャッキーアンディもみんな死亡。生き延びたレオン・カーフェイ悪玉を逮捕して、NGシーンが流れるエンドクレジットに突入。今回は日本公開用に編集された97分版と122分ある台湾公開版の両方を観ました。カットされているのは、ウェイと同じ房にいる囚人とのやりとりや、その囚人と見舞いに来る祖母とのエピソード全般、ウェイが懲罰房で苦しんでいるシーン、脱獄して息子と触れ合うサモハンのふれ合いエピソード、事件が解決した後にウェイが恋人を連れてサモハンの息子に会いに行くエピソードなど。ジャッキーのシーンは日本公開版の方がほんの数分だけ多めに映像が使われていました。