「三体」(2023)

 

大人気ハードSFの映像化作品をWOWOWオンデマンドで観ました。

 

 

監督はヤン・レイ。全30話。予告編はコチラ

 

2007年、北京オリンピック開催を控えた中国が舞台。ナノ素材研究の第一人者ワン・ミャオ(チャン・ルーイー)の元にシー・チアン刑事(ユー・ホーウェイ)が訪ねてきて、ある極秘会議への参加を要請。最近、世界トップレベルの科学者が続々と謎の自殺を遂げていて、その中にはワン・ミャオも知っている物理学者ヤン・ドン(ホー・ドゥジュエン)の名前もありました。その背景には学術組織「科学境界(フロンティア)」の存在が大きく影響しているため、過去にその組織の説明会に参加したことがあるワン・ミャオに潜入してもらって、内情を探ってもらいたいという依頼内容です。知性のかけらもない厚かましいシー・チアン刑事にイラつきながらも、全員が科学の限界を感じて自殺したと言われている真相を知りたくて、科学者としての使命で引き受けることにしたワン・ミャオ。

 

組織に入って調べているうちに、科学者が集められた「科学境界」はほんの入り口で、「地球三体協会(ETO)」という謎の団体の存在を知ったワン・ミャオ。そして彼らが開発した仮想宇宙を舞台にしたオンラインVRゲーム『三体』がさまざまな秘密のカギを握ると睨んだワン・ミャオは、現世の地球とは少し違う環境下の地球の文明を科学の力で発達させていくゲームをプレイする中で、少しずつ謎が見えてきます。スー・チアン刑事も上長となる作戦センターチャン将軍(リン・ヨンジエン)のバックアップを受けて、ワン・ミャオの捜査を援護。やがて、物理学者ヤン・ドンの母で天体物理学者イエ・ウェンジエ(チェン・ジン)が全ての事件に大きく関連する人物であることが判明。文化大革命で父を粛清された歴史を持つ彼女の辿った人生が、地球存亡の危機を招くキッカケとなった出来事に密接に関わっていて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

中国のSF作家劉慈欣の超ベストセラー小説『三体』のドラマ化。本作は中国語圏で製作されたバージョン。原作は未読。ドラマでは作品内世界を愚鈍に丁寧に説明しているため、かなり分かりやすいかも。『陽子』だとか、『智子』だとか、女性の名前みたいな難解な用語、11次元の世界などもうっすらと理解できた気になれます。徐々に愛着が湧いてくるスー・チアン刑事が、理系に疎い視聴者寄りのスタンスでいてくるのが心強いです。若き日のイエ・ウェンジエを演じるワン・ズーウェンの幸薄そうな美女ぶりも良いです。物語の壮大さは原作のクオリティに準じていると思われます。環境破壊を訴える女性記者スー・チアン刑事の優秀な女性の部下はドラマオリジナルのキャラだとか。予算と手間がかけたCGの物量作戦で描く場面は圧巻です。中国映画によくあるツルっとしたCGも、VRゲームのビジュアルなので違和感がありません。

 

三部作の小説の第一部までを描いていて、宇宙人とどのように接触することになって、地球の存在を知った宇宙人がどういう行動を仕掛けたかというところで話は終わります。視聴中はちょっと長いかなと思っていた30エピソードも、いざ終わったらすぐに続きが観てみたくなりました。「地球は滅びるよー」と呪文のように中国語で唱えるエンディング曲もいつの間にかクセになります。なお、3月21日から配信されるNETFLIX版は西洋チックにアレンジされてる感じ。「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)のショーランナー、デイヴィッド・ベニオフとD. B. ワイスが製作していて、エンディングに自信があるようなので、一定のクオリティは期待できそうです。