「イノセンツ」(2021)

 

北欧の子供たちのサイキックスリラーをU-NEXTで観ました。

 

 

監督はエスキル・フォクト。予告編はコチラ


ある夏休みにノルウェーで起きた出来事。両親と娘2人の4人家族が郊外の団地に引っ越してきます。近くに森がある静かな環境です。元気な妹のイーダと違って、姉のアナは自閉症で上手く言葉を発せられません。外で遊ぶことが好きなイーダは、近所に住む子たちと仲良くなります。一人はベンという男の子。念ずると小さな物体を手を触れないでちょこっと動かすことのできる超能力を持っていました。もう一人はアイシャという女の子。離れたところにいるアナの思考とシンクロすることができる超能力を持っていることに気づきます。森の中や、団地にある公園などで、時には姉のアナと一緒に楽しげに遊んでいるうちに2人の能力を知ったイーダ

 

アイシャとアナの間で意思疎通ができていることを見て驚く母親。家に戻ったアナに初めて「パパ」と呼ばれて感動する父親。そんな良いこともありますが、話は不穏な方向に進んでいきます。姉ばっかりに気をとられている両親にジェラシーを感じたイーダがアナの靴にガラスの破片を忍ばせる悪質なイタズラをします。大木を折れるまでのパワーに育っていたベンは母親を傷つけて、遠隔操作でイジメっ子の足を折ります。驚異的な能力にドン引きしたイーダがベンを仲間外れにすると、逆上したベンはある人に殺人行為を遠隔で行わせます。怒ったイーダは橋の上にいたベンを突き落とします。今度は奇跡的に助かったベンが殺意をみなぎらせて反撃を開始して・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「De uskyldige」。ノルウェー語で"無垢"という意味。大人たちの知らない世界で、子供同士で次第にエスカレートしていくサイキックパワー合戦澄み切った空気を感じる北欧の団地で繰り広げられます。映像がキレイ。子供がカワイイ。超能力が地味にスゴイ。子供の様子がなんだか気味ワルイ。やることが結構エゲツナイ。決着がついてオシマイ。という感じです。大友克洋の代表作の一つである「童夢」にインスパイアされたというサイキックホラー。無邪気な子供があけすけに酷いことをするところが不気味で、血まみれのスプラッターや、暗くて湿っぽい恐怖が襲うジャパニーズホラーとも違った雰囲気があります。

 

ほとんど説明がなく、不穏な緊張感を持続したまま、ナチュラルな演技の子供たちの超能力が肥大化。ただ、超能力を持つ少年と少女が移民の家庭で、二人ともシングルマザーに育てられていて、夏休みにどこにも出かけずに団地にとどまっているところから、ビンボーな家庭だとも想像できます。彼らに宿った超能力は、ただただ暴力的になるしかない男(少年)と心の中にある悲痛の叫びを共有する女(少女)といった具合に、社会格差が引き起こした貧困にあえぐ人の気持ちを表現しているのかもしれません。そうじゃないかもしれませんが、静かな狂気を意味ありげにビジュアル化した独特の質感の映画でございました。