「クイーンズ・オブ・フィールド」(2019)

 

おらが町のサッカーチーム存続を賭けた女性の奮闘を描くフランス映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本はモハメド・ハムディ。予告編はコチラ

 

フランス北部のクルリエールという田舎町。地元住民のみで結成していて90年の伝統を誇るサッカーチームSPACは、地元で愛されている名門クラブ。かつての名選手だったマルコ(カド・メラッド)が現在の監督を務めています。しかし、リーグ戦終盤のゲームで全選手入り乱れての乱闘騒ぎを起こして、全員出場停止の処分を受けてしまいます。残りの3試合で1点取って引き分け以上の成績を残さないと、チームはリーグから降格の憂き目に遭うことに。町のサッカープレーヤーは全員チームメンバーであるため、追加メンバーの補充は見込めない状況。チーム関係者行きつけのバーで今後について相談していたところ、マルコ監督の娘レアが「女子たちでサッカーチームを作ろう」と提案。オーナーや選手たちは大反対しますが、他に策がないマルコ監督は女子選手でのリーグ戦参加を決断。

 

メンバー入りしたのは、選手の主婦たち、女子高生、警官、バーテンダーといった面々で、一人を除いてサッカー未経験者。アンチ女子チーム派のオーナーがグラウンドの電気を消して夜間練習を止めさせようとしますが、オーナーの嫁カトリーヌもチームに加入して女子メンバーが抵抗。普段家事をしない夫に子供たちを任せてトレーニングに励みます。 かといって、すぐに上達するわけもなく、最初の試合はボロ負け。苦肉の策として、次戦対戦相手監督に八百長をお願いするも却下されます。前科持ちで矯正施設に入っているサッカー経験者サンドラが加入して得点力不足が解消されるかと思った2戦目も惜敗。やがて、母親不在で家庭不和になったメンバーも出てきて、一致団結したはずのチームは空中分解の危機。果たして、SPACは存続できるのか・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Une belle équipe」。"素晴らしいチーム"という意味。地元民によるアマチュアリーグを舞台にしたダメチームが奮起するスポ根モノ。いくら小さい田舎町とはいえ、他に男性プレーヤーぐらい見つかるだろうとか、初心者の女性に負けるわけないだろという突っ込みはナシ。草サッカーレベルでも長年続くリーグ戦があって、郷土のクラブチームとして根付いている世界がなんともうらやましい限り。男に代わって女が頑張る急造ポンコツチームなので、試合を成立させるのがやっと。一方、女に代わって男が頑張る急造子育ては、ポンコツすぎて家庭が上手く機能していかないという対比で描かれていて、ジェンダーロールへのシニカルな視点もあり。

 

俳優陣では、マルコ監督の右腕的存在のミミル(アルバン・イヴァノフ)のコメディリリーフがおいしい役どころ。1982年W杯準決勝の西ドイツ戦をいつまでも悔しがっているキャラ設定というサッカーネタあり。女子選手にはレズビアンが多いという生々しいジョークも発します。あと、フランス代表で活躍したコリン・フランコがサッカー経験者のバーテンダー役で出演。チーム入りする女性陣はほど良く個性的で、反発する夫たちもほど良いタイミングで改心して妻を応援。ラストゲームでも、ほど良い時間帯同点ゴールする、ほど良く感動的な結末。特に、日々の生活に追われる女性に元気を与えるタイプのハートフルコメディでございました。