「レッド・ロケット」(2021)

 

元ポルノ俳優のダメダメな再出発を描いた映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本・編集はショーン・ベイカー。予告編はコチラ

 

マイキー(サイモン・レックス)がハリウッドからテキサスシティに帰郷。オーラル賞(ポルノ界のアカデミー賞)に数回ノミネートされたというポルノスターでしたが、現在は仕事にあぶれてしまって、20ドルだけを握りしめたTシャツ姿で戻ってきます。手ぶら状態の彼が訪れたのは、別居中の妻レクシー(ブリー・エルロッド)と義母リル(ブレンダ・ダイス)が暮らす家。強引な屁理屈をまくし立てて家に転がり込むことに成功すると、なんやかんや出まかせを言いながら定職も見つけないで居座り続けます。若かりし頃一緒に上京したレクシーも一時は元ポルノスターだったらしく、一足先に実家に帰っていた模様。別の男との間にできた子供を施設に預けてたりもするようです。仕方なく、近所に住むファミリーがやっているドラッグ密売のバイトで小遣い稼ぎを開始するマイキー。隣に住む無職の男とつるんでは、根拠のない自信を彼にだけ吹聴する日々が続きます。

 

ある日、立ち寄ったドーナツ店でバイトしてる高校生ストロベリー(スザンナ・サン)と出会って、胸がときめきます。年甲斐もなく店に通い続けて口説き始めるマイキー。ストロベリーもまんざらでもない様子で、わりとカンタンに仲良くなって男女の関係になる二人。同時に同居しているレクシーとの関係もダラダラとキープ。高校を卒業したら田舎を飛び出したいと思っているストロベリーに、君は最高にキュートだからポルノの世界で絶対成功すると言って、性的搾取を企むマイキー。ストロベリーとイチャつく男をカッコ良く追っ払ったかと思えば、家族総出で殴り込んできてボコボコにされたりもします。何かの出来事がキッカケで正しく慎ましく生きるように改心するわけでもなく、モラルが欠如していて、ネジが数本足りないダメ人間のまま、その場しのぎでラクに生きるスタイルを懲りずに続けていくマイキーは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Red Rocket」。“盛りのついた犬の性器”という意味のスラングらしいです。なかなかお目にかかれないくらい、ムダに陽気なクズ人間の物語。まず、マイキー周辺の人物が誰もがイケてません。要生活保護の母子麻薬の売人一家偽の軍歴を語る無職男ビッチな女子高生(でもカワイイ)などなど。愚かさまみれの日常の中でたくましく生きている女性に寄生している男性たち。彼らの類型的に陥らずに、愛らしくも感じさせないキャラ設定が絶妙。そんなまともな生活を暮らせてるとは思えない人から見ても全員一致でダメ人間だと思われているにも関わらず、常にマイペースでプラス思考で一貫して利己的なマイキー。主人公のダメさ加減を称賛するわけでもなく、クズ男の経験値をさらに積み上げていく成長物語になっているところがユニーク。夜の路上をフルチンで疾走するクライマックスが似合う男です。カラっとした風土原色豊かな映像なので、不思議と清々しい気持ちになる映画でございました。