「俺ら東京さ行ぐだ」(1985)

 

カメラマンを夢見る田舎者とその両親を描いた人情喜劇をBS松竹東急で観ました。

 

 

監督は栗山富夫。予告編はないので、映画化するキッカケになった名曲はコチラ

 

原宿の写真スタジオ先輩(アパッチけん。現・中本賢)にイビられながらカメラマン助手として働く野々宮元(新藤栄作)。スタイリストの助手をしている伸子(柏原芳恵)とは、同じ下っ端どうしの田舎者ということで気が合うらしく、互いに想いを寄せるプラトニックな関係。ある夏の日、青森五所川原在住で農協の常務をしている父親耕造(植木等)から陳情のために上京するという手紙が届きます。母親あや(林美智子)夜行列車上野駅に到着するも、慣れない大都会に戸惑って、仕事で手が離せない元との面会に悪戦苦闘。両親が泊まるホテルでちょっと会話を交わしただけで、翌日は元の下宿先で待てども帰りは真夜中。で、ようやく帰ってきた元とは、カメラマンになろうなんて夢を諦めて田舎に帰れという父と衝突して大ゲンカ

 

翌朝、田舎から持ってきた職場へのお土産を元が忘れたことに気づいたので、あわててスタジオに向かった両親。たまたまスタジオに顔を出していた休暇中の伸子は二人がオロオロしている様子を見かねて、元が一生懸命に仕事してる姿をこっそり見せてあげて、ついでに両親の東京観光の道案内をすることに。さらには、たまたま乗りつけたタクシー運転手(吉幾三)が同郷であることを知って両親と意気投合。タダで銀座~浅草めぐりを買って出ます。思い出の地を訪れて、自分も若いころに上京して田舎で働くことを拒絶、父に連れ戻された過去を伸子に語る耕造。耕造とあやは「セガレのことを頼みます」と伸子に告げて、笑顔で東京を後にします。夜、元の仕事場に戻った伸子は、両親とデートしたことを報告して、二人で仲良く夜の街に出かけるのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1985年8月3日。「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」の併映作品。上京して居場所がない感じでいる初老の夫婦という要素は「東京物語」っぽくもあります。スタジオに入り浸りのカメラマン助手というプログラムピクチャーらしい安上がりな設定ですが、東京で働く息子を思う親心でしんみりとさせる小品でした。とぼけた味わいの植木等(セブンイレブンを11PMと間違える小ボケもかます)はさすがで、林美智子演じる母親役が実にハマリ役。田舎の母らしい純朴な愛情がにじみ出る演技が絶品。どちらかというと若者のカップルよりも元の両親に焦点を当てた作りかも。国会近くにある警官役でレオナルド熊、父の思い出の味"デンキブラン"を出すバーのマスター役で中村嘉津雄なども出演。冒頭で「俺ら東京さ行ぐだ」を唄う歌手として、中盤でカーラジオから流れる「俺ら東京さ行ぐだ」をディスるタクシー運転手として、二役を演じる吉幾三が美味しく助演しています。