「PEARL パール」(2022)

 

唄って踊って殺しまくるシリアルキラー誕生譚をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本はタイ・ウェスト。予告編はコチラ

 

1918年のアメリカの田舎が舞台。パール(ミア・ゴス)は体が自由に動かない父親(マシュー・サンダーランド)の介護と農場の手入れに追われて、厳格な母親のルース(タンディ・ライト)のモラハラも激しく、肩身を狭くする日々。第一次世界大戦の戦場に出向いている夫のハワード(アリステア・シーウェル)の帰還を待ちわびています。そんな彼女には唄って踊れるスターになる夢があって、市街地にある映画館のスクリーンに広がる華やかな世界を楽しむのが唯一の息抜きだったりもします。いつもおとなしく従順なパールですが、たまにムシャクシャした気分を晴らすかのように、飼っている動物を無残に殺すこともしばしば。

 

そんなある日、映画館で新任の映写技師(デヴィッド・コレンスウェット)と知り合って、望み通りスターになれるといいねとお世辞を言われたパール。すっかりその気になっていると、夫の妹ミッツィー(エマ・ジェンキンス=プーロ)から、戦地を巡業するダンサーを募集するオーディションが町で開かれるという話を聞きます。自分が合格する気マンマンのパール。しかし、浮かれたパールを見た母と大ゲンカ。パールの溜まりに溜まった鬱屈が一気に噴き出して、母を惨殺。ハイテンションのまま映画館にいる映写技師に会って体を求めあった後、自宅に連れ込んで惨殺。訪れたオーディションは不合格となって、一緒に受けた夫の妹も惨殺。かくして、殺人鬼パールが誕生したのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Pearl」。未見の「X エックス」(2022)の前日譚。オズの魔法使いのドロシーがレザーフェイスでしたみたいなお話。カラフルで落ち着きのある色調で彩られたアメリカのド田舎で虐げられていた女が殺人鬼に変貌する過程をじっくり描いています。パールを演じるミア・ゴスの顔芸が圧巻で、彼女のワンマンショーが見どころでラストの長回しの不気味さが出色。監督と一緒に脚本にも参加しているとのこと。成人になったパールからスタートするため、すでに病んでいます。異常殺人鬼の多くの最初の犯行は身近な小動物だという例に倣って、パールの最初の餌食となったのはアヒル沼の主であるワニのエサにしてからは人間が標的に。殺人シーンもスプラッター色は少なく、格調のある撮り方をしています。作り込み具合を楽しむ映画かと。現在製作中らしい三部作の最後『MaXXXine』の公開前に前作も観てみようと思います。