「BAD LANDS バッド・ランズ」(2023)

 

安藤サクラ、山田涼介主演のクライムサスペンスをNETFLIXで観ました。

 

 

監督・脚本は原田眞人。予告編はコチラ

 

大阪で特殊詐欺グループの"三塁コーチ"をしているネリ(安藤サクラ)。標的リスト作成の"名簿屋"、標的に電話する"かけ子"、標的の金を受け取る"受け子"、ATMから金を引き出す"出し子"、トラブル時に暴力対応する"ケツモチ"など、それぞれの役割は分担されていて、"受け子"に現場で指示を出すのがネリの担当。ネリが受け子に使っているのは、西成区のボロアパートに住む変わり者の男たち。特に、曼荼羅(宇崎竜童)と呼ばれる高城の元用心棒はアル中の狂人ですが、若い頃に世話になっているネリは親身になって面倒を見ています。ある日、根城にしているバー「BAD LANDS」で詐欺グループの"番頭"高城(生瀬勝久)と作戦会議をして、さっそく仕事に取り掛かるネリ。獲物となる老婆の金を騙し取るべく、銀行で引き落とした520万円を指定した場所で受け取ろうとするも、一般市民に紛れた刑事たちの存在に気づいて、即刻計画を中止。

 

特殊詐欺グループ検挙に動く大阪府警では、現場を仕切る佐竹(吉原光夫)率いる捜査チームが高城たちの足取りを掴みつつありました。ちょうどその頃、刑を終えて出所した弟ジョー(山田涼介)仲間に引き入れて、富裕層高齢者を狙う詐欺を実行するネリ。生来のトラブルメーカーであるジョーは仕事帰りに行った手本引きの賭場で、ネリが目を離してる間に大負け。背負った借金返済のため、賭場の元締め(サリngROCK)から殺人依頼を請け負うことに。殺人が失敗に終わってヤケクソになったジョーは、大金を隠し持ってそうな高城から現金を強奪して逃亡しようとしますが、その場にいたネリを交えての修羅場となります。死人も出て、警察の足音が徐々に近づく中で、東京からも自分を狙う大物投資家(淵上泰史)が大阪にやって来て、袋小路に陥っていくネリ。一発逆転を狙ってネリが取った行動とは・・・というのが大まかなあらすじ。


劇場公開は2023年9月29日。原作は黒川博行の小説「勁草」。ビミョーにニュアンスがおかしい安藤サクラの関西弁、原田監督特有のセリフの聞き取りづらさ、クセのあるセリフのワードチョイスのちょいダサ加減、流れるようなカメラワークを目指してるけど少し目障りな感じ等は多少あれど、ピカレスクロマンとして魅力的な題材を描いてるところがとても良かったです。月曜になると巫女さんの格好で街を疾走する奇妙な女の存在が前述したノイジーな要素にうまく紛れている点や、冒頭の犯罪シーンでの路上エキストラの動きの不自然さが演出上の狙いなら見事です。西成地区怪しげなバー、賭場や競艇場などのアウトローな情景も映画のクールな雰囲気づくりにフィット。バイオレンス描写にはもう少しエグ味が欲しかったかも。もの悲しい背景を持つ彼らに早い段階から応援してしまっている自分がいました。原作で男性だった主人公をネリという女性に変更している点も大成功だと思います。

 

しっかりと役作りしている安藤サクラ、無鉄砲で可愛げもある山田涼介、リアルな存在感を示す生瀬勝久、後半にカッコ良く豹変する宇崎竜童など俳優陣が多彩で、端役にいたるまでキャラが立っています。特に賭場シーンから現れるサリngROCK山田蟲男の得体の知れない悪党コンビ(大阪の同じ劇団で活動されてるらしく、この2人でのネリとジョーも観てみたい)が超絶素晴らしかったかなあ。浪花千恵子風にと監督がリクエストしたというサリngROCKの芝居がとてもいいアレンジ。それと、この人この人が効果的なタイミングで登場するので、贅沢な気分にもなれます。映画の終わらせ方にあまり日本映画ではあまり感じることがない鮮やかさがあって、ほど良くフィクショナルな世界観を現代風にアップデートして、個性的な役者が躍動する良作でございました。