「コカイン・ベア」(2023)

 

コカイン中毒のクマが暴れるコメディホラーをU-NEXTで観ました。

 

 

監督はエリザベス・バンクス。予告編はコチラ

 

1985年に起きた実話がベース。飛行中の麻薬密輸人アンドリュー・C・ソーントン2世(マシュー・リース)が、大量のコカイン入りバッグと共にパラシュート装備で落下しようとしたら、ドアフレームに頭をぶつけて意識を失ったまま墜落死を遂げてしまいます。死体が発見されたテネシー州ノックスビルの刑事ボブ(イザイア・ウィットロック・Jr)が捜査を開始。死亡ニュースを聞いた麻薬組織ボスのシド(レイ・リオッタ)はコカイン回収を部下に指示。ダヴィード(オシェア・ジャクソン・Jr)とシドの息子エディ(オールデン・エアエンライク)が落下付近に向かいます。その頃、チャタフーチー・オコニー国立森林公園に落下したコカインを食べてしまった1頭のクマが狂暴化。ハイキング中のオラフ(クリストファー・ヒヴュ)が襲われて、同行した彼女がクマに惨殺されます。国立公園にはもう1組、地元中学生ディーディーヘンリーも写生をするためにやって来て、発見したコカインのそばにいたクマに遭遇。

 

ディーディー不在に気づいた母のサリ(ケリー・ラッセル)公園を訪れて、常駐のレンジャーのリズ(マーゴ・マーティンデイル)と動物管理官に案内されて園内を探索すると、クマが強襲して動物管理官惨殺。サリはヘンリーを見つけて行方不明のディーディーがいるはずの森の中を捜索。事務所に戻って応援の緊急連絡をしたリズは追っかけてきたクマと戦闘状態になり、駆けつけた救急隊員もろともクマの餌食になります。やがて、コカイン入りバッグを数袋見つけた地元のチンピラ3人組、彼らを捕まえて残りのコカインを探す麻薬組織のダヴィードとエディ、彼らの居場所を突き止めたボブ刑事が三つ巴の争いを展開。さらには、ボスのシドも乱入したところにクマが襲撃。ようやくディーディーを見つけたサリは、時価数百万ドルのコカイン密輸を巡るバトルに巻き込まれながら、コカインでハイになったクマからも逃げなきゃいけない羽目になって・・・というのが大まかなあらすじ。


原題は「Cocaine Bear」。コロンビアの麻薬王エスコバルが暗躍してアメリカにコカインが流入していた時代に起きて迷宮入りした実際の事件を基に、クマがコカインを摂取して人を襲ったらというイマジネーションで作り上げた痛快なコメディ。食いちぎられる足手首ポッキリ、内臓ドバドバ、ありえない指の吹っ飛ばされ具合など、さまざまなパターンで痛めつけられる無惨な滑稽さが楽しいです。子供2人が見つけたコカイン試したり、エディが疲れてグッタリしたクマに覆い被されたり、細かい小ネタも豊富。ハイテンションで暴れるクマを除いたMVPキャラは、銃で応戦する気マンマンで、結局は道路に顔面を引きずられる目に遭うおばさんレンジャーを嬉々として演じているマーゴ・マーティンデイル。米ソ冷戦ドラマの名作「ジ・アメリカンズ」で好演したケリー・ラッセル、マシュー・リースと共演してる点もちょっとした見どころ。

 

また、「ゲーム・オブ・スローンズ」の野人トアマンド役でおなじみのクリストファー・ヒヴュが襲われる側となる配役にもニンマリ。組織の手下役の黒人がラッパーのアイス・キューブの息子なのは後で知りました。なお、映画の最後で次の映画撮影中に急逝したレイ・リオッタへの追悼文が捧げられています。ボブ刑事の溢れる動物愛、別々に暮らす子供との関係に悩むエディの家族愛や、ラリった母クマとサリとの母性対決の様相もあり、バカバカしさとハートフルな人情味をブレンドして手堅くまとめている点が高ポイント。会話劇で交わされるジョークはやや空回り気味で、テンポがいい割りには物語としてのグルーヴ感は上手く出ていませんが、バカな小咄として楽しめる映画でございました。