「バッドサンタ」(2003)

 

ダメ中年サンタの下品なブラックコメディをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督は最近リバイバル公開された「ゴースト・ワールド」(2001)でも話題のテリー・ツワイゴフ。予告編はコチラ

 

ウィリー(ビリー・ボブ・ソーントン)はバツ2で前科持ち。その上、重度のアルコール依存症のダメ中年。仕事はアル中の父から仕込まれた金庫破り。クリスマスシーズンになると、相棒のマーカス(トニー・コックス)とショッピングモールでサンタのバイトをしながら、クリスマスイブの夜に金庫から大金を盗んで逃亡しては、また散財して翌年に違う場所で同じことを繰り返す日々を続けています。10万ドルぐらいの現金を強奪したある年のクリスマスイヴに、ウィリーはとうとう泥棒稼業を卒業。断酒して憧れのマイアミでバーを経営することを夢見て移住します。翌年の12月、結局マイアミのビーチで客として酒浸りの生活をしていたウィリーの元にマーカスがやって来て、再び金庫破りの仕事を依頼。今回の仕事先であるアリゾナ州フェニックスに向かった二人とマーカスの妻(ローレン・トム)

 

ショッピングモールでサンタの職を得たウィリーは店内のセキュリティシステムの調査を開始。女性客手を出したりする女好きの性格は相変わらずで、バーでウェイトレスをしていたスー(ローレン・グレアム)と意気投合、サンタの恰好をした男にヤラレたいという趣味を持つスーとすぐに恋仲に。ある日、サンタに扮して子供の相手をしていた時にいじめられっ子の少年(ブレット・ケリー)が訪れて、ウィリーを本物のサンタと信じこんで何かと付きまとうようになります。デブガキを鬱陶しいと思いながらも適当にあしらっていると、住んでる家が豪邸で、デブガキの父は探検家でずっと不在、同居している祖母は半分ボケてる状態だと知って、その家にスーを連れ込んで居つくようになるウィリー。そんなウィリーにさらに懐いてくるデブガキのピュアなハートに柄にもなく感化された頃、金庫破りをするクリスマスイブがやってきて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Bad Santa」。製作総指揮はコーエン兄弟。主演は負け犬風情の中年男を演じさせたらピカイチのビリー・ボブ・ソーントン「三十四丁目の奇蹟」(1947)でも描かれていたショッピングモール・サンタをオモテの職業にしている男がエルフ役を演じる男と組んで、ウラではクリスマスイブに金庫破りをしているという設定がユニーク。名前を変えながら各地のショッピングモールで同じ犯行を繰り返します。クリスマスイブばかりはガードマンも休暇を取るため、泥棒にとっては絶好のチャンス。帰りがけのガードマンがボタンを押すと、30秒後に自動施錠システムを作動します。その30秒の間に金庫が眠る部屋に二人が忍び込んで、小男のマーカスが狭いダクトから警備室の換気口に侵入して防犯カメラ機器をストップ。あとは、夜明けまでにウィリーが金庫破りを決行するという段取り。しかし、素行の悪い二人を怪しんだ店長に依頼されて二人の身辺調査をしていた警備主任に素性を知られて、捕まるのかと思ったら分け前の半分を寄こせと脅迫されます。ひとクセある警備主任を演じるのはコメディアンのバーニー・マックマーカスの妻ウィリーの恋人デブガキの祖母といった主な登場人物が全員変わり者で、今や名脇役女優のオクタヴィア・スペンサーが端役の売春婦を演じていました。

 

その中でも最も好きなキャラが、主人公を改心させるデブガキ。太ってるという理由だけで近所の悪ガキグループにいじめられていて、探検家だと思っている父は犯罪者で服役中だったりする不憫な少年です。TVを見ながら寝てばっかりのおばあちゃんの穏やかな性格を受け継いだ純朴な彼の絶妙なウザさが秀逸。サンタの妻の妹だからといってスーを自宅に連れ込まれてSEXをしているウィリーをサンタだと信じて疑わず、ことあるごとにウィリーにサンドウィッチを勧めてくるのが次第に可笑しくなってきます。お手製の木彫りのプレゼントをウィリーに渡そうと思ってケガをしてしまったあたりで、ウィリーが徐々に父性に目覚めてしまっていく展開には少しホロリと来ます。強い子になるようにボクシングザツに教えて、いじめっ子を大人げなくボコボコにするウィリー。イブの夜、警察に追われるウィリーがクリスマスプレゼントをデブガキに届けるあと一歩のところで、銃弾に倒れる悲しい結末と思いきやというエンディングも心温まります。13年後のウィリーとマーカス、デブガキが再登場する続編もいずれ観てみたいと思います。