「毒戦 BELIEVER 2」(2023)

 

バイオレンス濃度高めの麻薬捜査物の続編をNETFLIXで観ました。

 

 

監督はペク・ジョンヨル。予告編はコチラ

 

アジアの麻薬シンジケートを牛耳る組織の黒幕である"イ先生"の逮捕に執念を燃やし続けている刑事チョ・ウォノ(チョ・ジヌン)。熱血すぎて警察内でも浮いてます。一方、前作で捜査に協力した後に失踪していたソ・ヨンナク(オ・スンフン)と病院から脱走したブライアン(チャ・スンウォン)も麻薬組織の一員でありながら、いまだにイ先生の正体が分からないまま。チョ刑事はヨンナクとブライアンの足取りを追うことで、真相に近づこうとしています。まず、ブライアンの動向。警察に押収された麻薬の原材料をヨンナクに横取りされた挙句、背中を焼かれるリンチを受けて警察に捕まった後は病院で療養中でしたが、部下である凄腕のスナイパー軍団を使って脱出に成功。イ先生の直近の幹部で"ビッグナイフ"の異名を持つソプ・ソチョン(ハン・ヒョジュ)接触して、ヨンナクの麻薬製造利権を強奪しようと画策しています。ビッグナイフはイ先生の正体を知る数少ない幹部の一人。

 

次に、ヨンナクの動向。麻薬製造のプロである手下の聾唖兄妹ドンヨンとジュヨンと共に、新たに調達した麻薬工場で麻薬「ライカ」の製造を開始。そこに登場したビッグナイフ率いる武装集団がヨンナクを始末しようとしますが、ヨンナクは上質の麻薬をイ先生に上納することを条件に死を免れます。同時に、彼女の要求に従うフリをしてイ先生に会うタイミングを伺います。その居場所を突き止めたチョ刑事が、援軍を待たずに部下とたった二人で乗り込んで銃撃戦が勃発。ビッグナイフはヨンナクを拉致して一足先に逃亡。武装集団の一斉攻撃で完全に劣勢のチョ刑事は部下を射殺されてしまいます。その後、ヨンナクに麻薬製造をさせたいビッグナイフブライアンも従えて、組織の麻薬工場の拠点であるタイ入り。無謀な捜査で半年の停職処分を受けたチョ刑事も懲りずに単独で捜査を継続、彼らを追ってタイに潜入します。やがて、ビッグナイフの裏をかこうとするブライアンが予想もしない計画を実行して・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「독전 2」。英題が「Believer 2」。ジョニー・トー監督のオリジナルをリメイクした前作の続編。本作オリジナルの展開で、前作の続きというよりは、前作で謎めいたままで終わらせた事の真相をあぶり出した内容。前作の主要人物のキャスト変更があったり、実はこういう裏事情がありましたという後付けのエピソードが説明過多で語られるため、前作でキレイに終わったと思った人にとっては何じゃコレと思う代物かもしれません。たしかに、ストーリーを追う面白さは前作の方が優れています。ただ、前作の世界観を再利用して、残酷描写マシマシにして、なんとか面白さを絞り出そうとする姿勢には感心するのみ。話を進める説明パートとドンパチ暴れまくるパートのバランスがほど良く、タイとノルウェーのロケ撮影シーンもあって、贅沢なプログラムピクチャーになっていました。韓国は劇中の麻薬組織同様、映画製作の拠点を東南アジアにも持っていて、ロケ撮影や現地でのリメイクの実績も多数。自国での製作環境、クオリティだけでなく、海外市場への進出も日本よりはるか先に行っているなとつくづく実感します。

 

要所で出てくる残酷描写部門で一番インパクトがあったのは、タイでイ先生に仕える手下ブライアンの側近女性スナイパー射殺される場面。このスナイパー(ソ・ハジョン)がいちいちカッコ良くて、最もお気に入りのキャラでもあります。不敵な笑みうなじもCOOL。チョ刑事演じるチョ・ジヌンはもはや高値安定の存在感。ブライアン役のチャ・スンウォンは車イスのまま、アタマで策略を巡らして事態をかき回します。ヨンナク役は前作からキャスト変更。ミステリアスで哀しげな要素が薄れて、人間味ある雰囲気になってる感じ。一番話題を呼びそうなのは、中国からやって来たビッグナイフを演じるハン・ヒョジュ。清楚美人系女優がガサツで凶暴なキャラを大胆に熱演していますというイメチェンぶりを楽しむこと込みでのキャスティングといった印象。クセのある仕草を多めに取り入れることでシンプルな美しさをかき消そうとがんばっています。前作でインパクトあった聾唖兄妹の感傷的なエピソードもあり。「ミセン」のピョン・ヨハンもちょこっと出てます。あと、エンドロールでのキャスト紹介の仕方が斬新とまでは言わないまでも新鮮でした。ちなみに、肝心のイ先生の正体はこの人です。