「想い出づくり。」(1981) 

 

山田太一脚本の名作TBSドラマを観ました。初見。

 

 

監督は鴨下信一、井下靖央、豊原隆太郎。全14話。予告編集はコチラ

 

24才を迎える独身女性3人が主演。人通りの多い新宿で勧誘員の根本(柴田恭兵)から「アンケートの回答の謝礼でポケットカメラをプレゼントするよ」と言われて、指定された事務所に足を運んだ若い女性たちの中に吉川久美子(古手川祐子)、池谷香織(田中裕子)佐伯のぶ子(森昌子)がいました。8万円の入会金で格安の海外旅行に行けるメンバーの勧誘で、強引なセールストークに丸め込まれて会員になる3人。結婚するまでの想い出づくりとして海外旅行をという思惑も虚しく、その旅行会社は計画倒産していまい、せっかく払った入会金が無駄になってしまいます。これが縁でちょくちょく会うようになった3人はそれぞれの悩みを語り合う親友に。自分たちを騙したヤツを懲らしめようと恨み酒を酌み交わしていたところ、のぶ子が電車内で偶然に根本を見つけて尾行。見つけたアパートに押し入って金を返せと怒鳴り散らすも、根本が逆ギレ。海外旅行に行くぐらいしか想い出づくりができないのかよと言われた言葉が突き刺さる3人。

 

公務員を辞めて静岡から上京。小田急ロマンスカーの売り子をしているのが久美子。実家で洋品店を営む父親(児玉清)がたまに上京してきて、そのたびに早く結婚しないと行き遅れになるぞと言われています。一目見たときから久美子に惚れていた根本が執拗なアプローチを開始。猛烈プッシュに押されて自分のアパートに入れると、豹変した根本に襲われます。福島出身で商社でOLをしているのは香織。つまらない会社勤めにウンザリしながら、セクハラ課長に口説かれて、ついつい一夜限りの関係を結んでしまうことに。彼女も父親(佐藤慶)からいつ結婚するんだとしょっちゅう言われています。両親、弟と同居してロッテのお菓子工場で働いているのがのぶ子。父(前田武彦)の勤め先社長の甥っ子中野(加藤健一が好演)とお見合いすることになり、妙に気に入られてしまったため、あきらめずに家に押しかけては自分の思いを熱弁する中野に翻弄されていきます。3人はなかなか上手くいかない現状を打破することができるのか・・・というのが大まかなあらすじ。

 

1981年9月18日から毎週金曜22時放送のドラマで、裏のフジテレビ系では「北の国から」がぶつかった屈指の好カード。当時の視聴率では勝っていたようです。トレンディな匂いが国全体を覆う前の昭和の東京が舞台。仕事観、結婚観がまさに昭和そのもので、古臭い価値観に振り回される女性たちが不憫に見えます。一方で、どの時代でも現在進行形で求められる人間像に即した振る舞いを演じさせられるのが社会人なのかなとも思う次第。給湯室で上司に淹れたコーヒーにツバを吐くところから始まる田中裕子目当てで観ましたが、中盤から水商売に墜ちていく古手川祐子のピュアな色気が素晴らしいです。同じ頃に出演してた「西部警察」のおきゃんな妹役も思い出しました。一番野暮ったい森昌子がトップクレジットで、演技のカンが良いことを知ったのも収穫。歌手の実力も合わせると、もっと活躍すべき人材だったんだと思わせます。ロッテオリオンズのチアガールになるシーンもあり。柴田恭兵はいつもの唯一無二の柴田恭兵ぶりです。

 

流暢に勧誘トークをしゃべるインチキ旅行会社社長で浜村淳、クリスマスと同じで25を過ぎると賞味期限がなくなるとTVの落語で笑いを取る桂文珍、騙された会員のモブとして戸川純、ラジオでプロ野球解説をする野村克也、田中裕子に一度フラれてから気の許せる飲み友達になるマジメ風情の岡崎というサラリーマン役で矢島健一、柴田恭兵の元カノで古手川祐子に八つ当たりする美女として田中美佐子(田中美佐名義)などが脇役で出てきます。終盤の展開は・・・、久美子は根本とくっついたり離れたりを繰り返して、最終回にようやくケジメをつけます。のぶ子は中野の勢いに押されて結婚を決意。でも結婚式当日にやっぱりイヤになって、久美子と香織と一緒になって式をボイコット。こちらも最終回になってある結末を迎えます。香織は福島の田舎でのお見合いも不発ばかりで、妥協して飲み友達の岡崎と結婚しようと思いますがフラれます。ただ、最終回に予想外の人物と電撃的な出会いをする展開が荒唐無稽すぎて面白かったです。