「イコライザー THE FINAL」(2023)

 

デンゼル・ワシントンが秒殺しまくるシリーズ最新作を池袋グランドシネマサンシャインで観てきました。

 

 

監督はアントワーン・フークア。予告編はコチラ

 

マフィアの本場でもあるイタリアのシチリア島。ブドウ園が広がる自宅に戻ってきた初老の男ロレンツォですが、敷地内は死体がゴロゴロ。孫を車の助手席に置いて、おそるおそる家の中に入ると、二人の用心棒に確保されたおっさんが椅子に座っています。ご存知、ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)です。毎度のごとくストップウォッチを始動するや、9秒で周囲の男どもを秒殺、重傷を負わせたロレンツォも容赦なくショットガンで射殺。たった一人で敷地内の人間を皆殺しにした模様。しかし、邸宅の外に停まった車に乗っていたロレンツォの孫に、油断して背を向けた瞬間に撃たれてしまったマッコール。島をなんとか脱出するも、車で移動中に気を失ってしまいます。たどり着いた町で彼を見つけたボヌッチ警部が町医者の診療所に運ぶと、エンツォ医師が銃弾の摘出をして一命を取り留めます。詳しい事情も聞かずにマッコールが回復するまでしばらく家に泊めるエンツォ

 

アマルフィ海岸沿いにある美しい風景が広がる町で静養するマッコール。少しずつ体力が回復して外のカフェでくつろいでたりするうちに、カフェの優しいウェイトレスボヌッチ警部の可愛い娘など、素敵な住民たちと穏やかな街の雰囲気に癒されて、殺伐とした世界から引退して、ここを安住の地としようかなと思い始めます。一方で、アメリカ国防情報局(DIA)に電話してエマ・コリンズ捜査官(ダコタ・ファニング)に冒頭のブドウ園の情報を匿名で伝えます。ブドウ園は国際的なネットワークによる覚醒剤密輸の拠点だったようで、現地へ摘発にやって来たエマ捜査官がマッコールに接触します。のどかな田舎町はマフィア"カモッラ"のヴィンセントマルコの兄弟が牛耳っていて、恐怖で仕切っていました。DIAに悪人たちの退治を任せて事態を静観しようとしていたマッコールですが、罪のない住民たちを暴力で屈服させる様子を目にして黙っていられるわけがなく、粛々と正義の鉄槌を下していき・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「The Equalizer 3」。邦題は先走って最終章だと言わんばかり。たしかに、田舎町のプロサッカーチームの勝利で賑わう広場笑顔を浮かべて、本作でのバトルを最後にこのまま静かに過ごす余生を想像させるエンディングで映画は終わりました。オープニングで鮮やかな殺しの手口を披露、アクシデントで本来の動きができずに療養している間に住民たちとの交流、マフィアが町を支配する様子、DIAとの接触を描いておいて、体力が万全となった終盤で悪者たちを一気に叩きのめすという、胸がスカッとする展開はエンタメの王道で安定感あり。市街地で引き起こされる爆破テロシーンの迫力とその唐突さにビックリ。このシーンはドルビーアトモスで観た甲斐がありました。マフィアが警察を脅す場面などでのバイオレインス描写もなかなか。ほぼ全編イタリアロケによる撮影も自然光を生かした画面がキレイで、風景を楽しむ要素もあります。

 

登場シーンから後光が差していて、神の化身のような存在のマッコール。観客が彼の強さを分かっていて、「そんなにナメてかかると痛い目に遭うよ」と悪者にアドバイスしたくなるような気持ちにさせて、その通りに強さを見せつける流れは座頭市シリーズにも通ずる爽快感があります。全く老いぼれたところを見せないマッコールのプロフェッショナルぶりが今後見られないと思うと、非常に残念。そんなデンセル・ワシントンを堪能する見どころの次に注目なのは、「マイ・ボディガード」(2004)以来、18年ぶりの共演となるダコタ・ファニング。アメリカからわざわざイタリアに来るわりには大した活躍をしませんが、マッコールが彼女が演じるDIA捜査官に情報を提供した理由が最後に分かるところには感慨深いモノがありました。悪役の印象度が薄いのは難点で、中盤でマッコールが一度窮地に陥ってくれたりするとクライマックスがより盛り上がる気がしないでもないですが、勧善懲悪のお手本といえる面白さは間違いない快作でした。