「べらんめえ芸者」(1959)

 

美空ひばりの人気シリーズの1本をU-NEXTで観ました。

 

 

監督は小石栄一。予告編はありません。

 

東京柳橋の人気芸者の小春(美空ひばり)は昔気質の大工の棟梁である政五郎(志村喬)の一人娘。曲がったことが大キライ、気風が良くて美人、周囲からは男嫌いと言われている江戸っ子です。ある日、宴席で出会った青年健一(江原真二郎)が国際建築博覧会に茶室に出品するということで、その雛型の制作を政五郎に依頼。父とケンカして家出していた健一は政五郎に弟子入りして居候することになります。小春と健一は初対面時からそれぞれに好感を持っている様子。同じ頃、知り合いの呉服商から息子正雄(小野透)を預かる条件で、政五郎に仕事を斡旋してもらう約束を取りつけていた小春でしたが、斡旋先の平和建設の御曹司が健一であること、平和建設社長竹田熊吉(殿山泰司)が政五郎のかつての大工仲間だったことなどが判明。政五郎と熊吉は再会早々、口ゲンカになって、ちょっとした騒動に発展していきます。

 

父の熊吉は気に入らないが、健一の好青年ぶりが気に入った政五郎。健一が小春を好きなことを確認して、娘との結婚を進める側に回ります。小春が面倒を見ている正雄も二人の仲を取り持とうとしていて、お互いを意識するようになっていく小春と健一。一方の熊吉は、芸者の小春を大事な一人息子の嫁にすることには大反対。二人が別れるようにいろいろと画策。やがて、政五郎の作った茶室の雛型が博覧会で大評判になり、ニューヨークでの展示、海外バイヤーの商談話が浮上します。しかし、茶室の設計図を政五郎が平和建設のライバル会社にうっかり渡してしまい、博覧会の雛型も何者かに破壊される事件が発生。ライバル会社が怪しいと思った健一と小春は直談判しに行くも、口論から殴り合いに発展。そこに熊吉と政五郎も乱入しての大乱闘状態に。結局はライバル会社社長は逮捕されて、熊吉と政五郎も仲直り、小春と健一は無事に・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1959年12月6日。正式タイトルは「べらんめえ藝者」。べらんめえ芸者シリーズの一作目かと思ったら、べらんめえシリーズの第三弾という位置づけとのこと。美空ひばりのカリスマ性を知らないだけに、誰もが認めるべっぴんさんという設定には「ちょっと待った!」と言いたくなりますが、芝居も踊りもハイレベルでこなしているところは、さすがスターだなと感じます。この年だけで14本の映画に出演していて、まだ22才であることに驚き。すでにベテランの貫禄すらあります。チャキチャキの江戸っ子でありながら、しおらしい乙女っぽい部分も巧みに演じています。ボウリングパチンコを楽しむシーンもあり。ガンコ親父役の志村喬とのコンビネーションもバッチリ。最終的に結ばれるさわやか青年役の江原真二郎との相性も良し。

 

最後の大立ち回りでお互いの子供を結婚相手にくれてやると、言い合いながら仲良く戦う殿山泰司と志村喬の関係性も痛快。小春と健一がニューヨークに旅立ってハッピーエンドとなるかと思ったら、そうはならないオチもひとヒネリあって面白いです。あと、小春の子分的存在の正雄を演じていたのは小野透美空ひばりの実弟。俳優・歌手としても活躍しながらよろしくない方向に進んでしまって42才で亡くなったお方で、出演作を初めて観ました。他には、幇間芸人の悠玄亭玉介が幇間役で出演偶然や因縁や運命をほど良いご都合主義でまとめた脚本(笠原良三と笠原和夫のコンビ)が小気味良く演出されていて、とても観やすい1本でした。