「ジャグラー ニューヨーク25時」(1980)

 

ニューヨークを舞台にした誘拐サスペンスアクションの傑作を久々に観ました。

 

 

監督は途中降板したシドニー・J・フューリーに代わって、ロバート・バトラー。予告編はコチラ

 

ニューヨークでトラック運転手をしているボイド(ジェームズ・ブローリン)は嫁と離婚して、娘のキャシー(アビー・ブルーストーン)と二人暮らし。その日はキャシーの誕生日らしく、学校が終わったら一緒にバレエ鑑賞に行くとのこと。仲睦まじい父娘です。いつものようにキャシーを学校に送るボイド。しかし、ちょっと目を離したスキに通学路の公園にあるジョギングロードでキャシーを攫われてしまいます。車に引きずり込んで逃走しようとする男必死に追いかけるボイド。誘拐と知ったタクシー運転手の協力を得て追跡しますが、あと一歩のところ巻かれてしまいます。自身も交通事故で病院行き。男はキャシーを連れて、荒れ果てたサウス・ブロンクスにあるボロアパートで身を潜めます。どうやら、不動産業で大儲けしている実業家の娘と勘違いして誘拐してしまった様子。「私の父はトラック運転手よ」とキャシーが男に訴えても、聞く耳を持ちません。犯人の名はソルティック(クリフ・ゴーマン)。富裕層への八つ当たりで誘拐を決行。アパートから逃げようとするキャシーを捕まえて、その辺にいたホームレスのおっさんを殺害して脅します。

 

一方、ボイドはカーチェイスで暴れまくったため、治療先の病院で警官の監視下に置かれます。病院にいたトネリ刑事(リチャード・カステラーノ)に娘が誘拐されたことを訴えるも、そんな報告は受けていないと冷たくあしらわれます。別れた妻バーバラからも管理不行き届きでなじられます。犯人が実業家の自宅に100万ドルの身代金を要求する電話をかけた連絡を聞いてから、誤認誘拐を知ったトネリ刑事。ようやく捜査を開始して、実業家の自宅で犯人からの電話を待ちます。ボイドは病院を抜け出すと、元刑事の経験を生かして単独で娘探しを開始。犯人の足取りを自力で掴むと、犯人がアパートから娘を連れて逃げるところを発見。必死に追いかけますが、またしても地下鉄で巻かれます。夕方、犯人から身代金の受け渡し場所の電話があり、夜にセントラル・パークで開催されるフェス会場を指定してきます。厳重な警備を敷く警察の裏をかいて、身代金を奪って去って行く犯人。マヌケな警察は置いといて、死に物狂いのボイドは執念で犯人を見つけて、愛する娘を奪還するために捨て身で犯人に襲いかかって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Night of the Juggler」。邦題の25時というのは「警視庁24時」的なニュアンスなんでしょうか。治安の悪いニューヨークをザラついた映像で見せるアクション映画群の傑作の1本です。地方では同時上映が「サンゲリア」だったとか。濃いカップリングです。私は1985年2月2日のゴールデン洋画劇場で観て以来でしたが、面白さは色褪せておらず。男手一つで娘を育てているボイド。純朴でぽっちゃりして愛らしい娘さんが、金持ちの娘と似たような恰好をしてたばっかりに誘拐されてしまいます。犯人は社会に見捨てられて追い詰められた(と思っている)男で、たまに奇声を発したりする不気味さがあります。映画の結末を忘れていたので、娘さんが殺されないか、ずっと心配でたまりませんでした。廃墟と化しているアパート一帯、おっかない不良が乗っている地下鉄、いかがわしさ満点ののぞき部屋などなど、物騒なニューヨークそのものが映画の主人公でもあります。

 

夜勤明けから帰って来てすぐに娘が誘拐されて、一睡もせずにニューヨーク中を駆けずり回るオヤジの奮闘ぶりに胸がアツくなります。そのせいなのか、主演のジェームズ・ブローリンは撮影中に骨折して、一時期撮影が中断したそうです。ツイてない時は試練が重なるもので、一方的にボイドに恨みを持つ刑事(ダン・ヘダヤ)が追いかけ回して、白昼の市街地でショットガンを発砲してきます。さらに、地下鉄で絡んできた不良グループにも集団ナイフ片手に追い回されて、ボイドに次から次へと難関が待ち受けます。孤立無援のボイドの窮状を知って、見知らぬ人が手を差し伸べてくれる展開も面白ポイント。娘を乗せた車を追うために追跡を買って出た陽気なタクシー運転手(なんと、「HOMELAND」マンディ・パティンキン!)、たまたまボイドと行動を共にすることになった美人さん(同年公開でNYを舞台にした「グロリア」にも出ていたジュリー・カーメン)、捜査中のボイドを拾った縁でその後も協力する女性タクシー運転手のおばさんなど。不安や焦りを煽るシンプルな劇伴も効果的で、最初から最後までサスペンスが持続する傑作でございました。