「大日本人」(2007)

 

松本人志第1回監督作品をひさびさに観ました。

 

 

脚本・主演も松本人志。予告編はコチラ

 

むさ苦しい長髪の男をTV番組クルーが密着取材をしています。都内の一軒家に一人で住む男の名前は"大佐藤大"と言い、自らが巨大化して、「獣」と呼ばれる日本古来の巨大生物をやっつける「大日本人」であることが紹介されます。先祖代々、国内に出没する獣を退治してきた唯一の家系の人間にしては、質素な生活をしている大佐藤。プライベートな領域にまで踏み込んでくるインタビュアーの質問に丁寧に回答しています。彼で6代目となった現在では、世間から煙たがられる存在となっていて、大日本人不要論が多勢を占めている模様。大日本人としての活躍を放送する地上波TVでの番組も人気が落ちて、深夜枠に格下げされてます。たまにスナックで気晴らしするくらいで、妻や娘とは別居中、跡継ぎがおらず、祖父(4代目)の介護問題でも頭を悩ませている日々。

 

それでも、たまに「獣」が出てくるたびに、儀式の後に変電所大量の電気を浴びて大日本人に変身して戦いに挑む大佐藤。デカい図体の生き物同士が掴みあって、結局、大日本人が勝ってしまうマンネリのパターンが続く中、ある戦いの最中に正体不明の赤い「獣」が襲いかかって来て、ビックリした大日本人はつい逃亡してしまいます。今までにない展開となった戦いの様子を放送した回は話題となって、いつも1~2%だった視聴率は7%まで上昇。しかし、次の戦いでは可愛らしい獣を無惨に殺してしまい、視聴者の顰蹙を買って大バッシング。さらに、久々に会う娘にプレゼントを贈ろうと張り切るも、妻が別の男と再婚を考えると聞いて大ショック。ある日、赤い「獣」が再び現れます。戦闘意欲をなくしてる大佐藤ですが、日本政府によってムリヤリ巨大化させされて、再度戦う羽目になって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は2007年6月2日。劇場で観て以来。なんやかんやで松本人志監督作品は映画館で全部観ていて、全て消化不良の気分になりました。思いつきで設定したようなありえないシチュエーションをネタにして、ありがちで絶妙な"あるある"を端的に抽出したり、細かい庶民描写を積み重ねていく松本人志のセンスが活かされているところは面白く、(人によっては退屈なだけに感じるかもしれない)前半の大佐藤の日常を探るインタビュー箇所はじんわりと来る可笑しみが味わえます。ここのパートでジワジワとジャブを打ってから、いよいよ大佐藤が大日本人に変身すべく、変電所にバイクで向かっていくところまでは、とてもワクワクさせられる作りになってると思います。また、CGによる怪獣(解説書付き)との対決を数回挿入させて、賑やかな要素も担保しています。「獣」のモチーフになっているのは、海原はるか竹内力神木隆之介板尾創路吉本後輩たち。あと、大佐藤のマネージャーとしてUAも出演。

 

獣との争いが終わると、またジワジワトークのパートに戻ってしまうのが残念で、せっかくなら、途中からもっと違うワールドに連れて行ってほしかったところ。物語自体が停滞してる時間帯が多く、音楽も少し間が抜けていて、調子が上がってきません。最後に映画っぽいハデなバトルでが繰り広げられるかと思いきや、意表を突いて、あえてハズした笑いをかまします。クライマックスからエンドロールの一連のやりとりは観てるこちらが恥ずかしいくらい。コント集であれば、単発の笑いの詰め合わせとして十分に面白いのですが、1つのストーリーとして見ると、う~んと思ってしまうもどかしさがあります。結果的には、河崎実監督が作っているおバカ映画と同じくらいの楽しさはあるので、予算が違いすぎるとはいえ、可愛らしい映画だとは思います。