「バイオレント・サタデー」(1983)

 

スパイサスペンスアクションをAmazonプライムビデオでひさびさに観ました。

 

 

監督はこれが遺作となったサム・ペキンパー。予告編はコチラ

 

ジョン・タナー(ルトガー・ハウアー)は、鋭い視点で政治・経済に斬り込む番組で人気のニュースキャスター。彼の大学時代からの友人である放送作家オスターマン(クレイグ・T・ネルソン)、医師のディック(デニス・ホッパー)、証券マンのジョセフ(クリス・サランドン)3人組がソ連のスパイだというんで、CIAから彼らから真相を引き出させる作戦への協力を持ちかけられます。CIA長官ダンフォース(バート・ランカスター)から直々に依頼されて、独占インタビューを条件にこの話を承諾したタナー。ちょうど週末に男三人が妻を同伴してタナーの家に遊びにやって来ます。

 

CIAはタナーの家に隠しカメラやマイクを忍ばせて、彼らの会話を全チェックする体制を敷きます。任務を実行するCIA捜査官はファセット(ジョン・ハート)。KGBの陰謀に巻き込まれて妻を殺された過去を持つファセットは、3人組がその事件に関与しているため、自ら志願してこの任務に就きました。妻子と暮らすタナーの邸宅のすぐ近くにある森林にアジトを構えて、実力行使ができる部隊も待機させる万全の状態となってから、スパイ容疑の男たちを招き入れて作戦開始。やがて、この作戦の裏にある真の目的が判明して、昔からの友人が集まってのんびり過ごすはずの週末が、厳しい生き残りを賭けた戦場と化していって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「The Osterman Weekend」。"オスターマン会の週末"といった意味で、リーダー格であるオスターマンの名前を冠した週末の集いを指しています。"ジェイソン・ボーン"シリーズで有名なロバート・ラドラムの原作を映画化。タナーの友人である3人がスパイである秘密を探るために盗撮して証拠を掴もうという作戦のお話。CIAがタナーに協力を得ようとした理由がいまいち不明だったり、展開に疑問符が付く箇所が多々あります。最終的には、国家間の細菌兵器開発をめぐる争いではなく、ある人物の私怨による戦いでしたというオチでした。ファセットの妻の殺害現場映像見るCIA長官から始まる本作には、ハイテク監視社会への警鐘といったテーマがあり、当時最先端だった盗撮・監視システム機器TVゲームがレトロ感を醸し出してます。タナーとファセットがTVモニターを通じて会話してるところに急に3人がやって来たので、慌てて天気予報をしているキャスターのフリをするコントのようなシーンあり。

 

ペキンパーの演出は総じて凡庸。得意のスローモーションも申し訳程度で使われているだけ。カーチェイス爆発炎上銃撃などアクションシーンもそれなり。音楽はラロ・シフリン。IMDBトリビアによると、ペキンパーの師匠ドン・シーゲルの推薦で起用されたとか。ペキンパー監督だということでギャラを下げてまで参加したという俳優陣は豪華なおっさんが揃っています。主役は、ハリウッドに進出し始めたルトガー・ハウアー。追いかける敵役のイメージが強いので、知的なニュースキャスター役はちょっともったいない起用かなあ。まあまあ体を張っていて最後をやっつけて家族を助ける役どころ。デニス・ホッパーはただ画面にいるだけ。バート・ランカスターの重鎮感はさすが。神経症的な不気味なキャラのジョン・ハートが一番活躍しています。女優陣は主に露出面奮闘。正直ペキンパー監督作品じゃなかったら、なんじゃコラという内容でしたが、昔観たVHSよりずいぶんとキレイな画質だったので、それだけで満足でした。本作自体より、本作の裏側を描いたドキュメンタリーの方が面白く、出演者が当時のことを語っていて見応えがあります。