「ヴァイラス」(1999)

 

電磁波SFホラーをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はジョン・ブルーノ。予告編はコチラ

 

ロシアの宇宙ステーション「ミール」と交信中の南太平洋上の衛星探査船ヴォルコフ号ミール謎の電磁波がぶつかったかと思うと、その電磁波が衛星通信経由でヴォルコフ号にズドーンと直撃します。その1週間後、近くの海を航行中の貨物船シースター号が大型台風に遭遇エバートン船長(ドナルド・サザーランド)は航海士フォスター(ジェイミー・リー・カーティス)の進言で台風の目の中に入って緊急避難。貨物船は助かりますが、全財産をつぎ込んだ積み荷を失ってしまったエバートン船長はションボリ。すると、シースター号のクルーが、停泊していたヴォルコフ号を発見。遭難したロシアの探査船をロシア政府に引き渡せば、資産価値の10%を報酬としてもらえることに気づいた船長はニンマリ。探査船の資産価値はざっと計算して3億ドル。クルーで山分けしても、1人あたり数百万ドルをゲットできるということで、さっそく探査船内に乗り込みます。

 

シースター号のクルーには、船長とフォスターの他に、機関士ベイカー(ウィリアム・ボールドウィン)ヒコ(クリフ・カーティス)ウッズ(マーシャル・ベル)リッチースクィーキーがいます。彼らが船内を捜索していると、無人と思われた巨大な探査船が勝手に錨を降ろして、シースター号を破壊して沈めます。探査船内には生き残りが1人いました。ヴォルコフ号の科学担当官だというロシア人女性ナディア(ジョアンナ・パクラ)。恐怖に怯えた表情で、電磁波が船のコンピュータを支配、自分以外の300人の乗船者を全て殺して、その肉体を部品にして機械と融合させた電磁波自身の肉体を形成、"それ"が人類を絶滅させようとしていると口走ります。数人の犠牲者が出たことで、彼女の戯言がようやく真実だと思い知らされたクルー。台風被害で外部との通信ができず、その後も一人ずつ死んでいく中で、電磁波生命体との激しいバトルを繰り広げるのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Virus」。日本語でいえば、"ウィルス"です。電磁波目線では、人類は地球に害を与える病原菌だとのことです。マーベル、DCに次ぐ規模のダークホースコミックスのコミックが原作。原作者が脚本も手掛けてます。電気をエネルギー源とする電磁波が地球にやって来て、探査船のコンピューターに侵入して地球上の学問を一瞬で学習。機械や人間を部品にした生命体となって、害虫である人間に襲いかかるといったお話で、ロシアの探査船とアメリカの貨物船のクルーが最初の餌食になります。実体のない電磁波を物体化するために、どうして人間の肉体を使う必要があるのかは、半分機械、半分人間のビジュアルを見せたいからに違いありません。フィル・ティペットのチームも参加した特殊効果は本作の最大の見どころで、ほど良いグロさを楽しめます。閉鎖空間で未知の生物に襲われるストーリーは「エイリアン」(1979)「遊星からの物体X」(1982)と似ています。

 

1人、また1人と無理やり機械人間にされてく中で、最初からマトモな船長に見えないドナルド・サザーランドは自らノリノリで電磁波生命体となります。気合いだけで困難に立ち向かうイケメン枠のウィリアム・ボールドウィンよりも、元軍人の経験を生かした武力とITリテラシーが高い知力を併せ持つリッチー役のシャーマン・オーガスタスが本作のMVP。東欧系美女ジョアンナ・パクラも体を張った活躍。当然のごとく、元祖スクリーム・クイーンのジェイミー・リー・カーティスは、終盤まで生き残って叫びながら戦います。船内の位置関係(敵との距離感)が分かりづらく、どうすれば助かる道があるかの状況説明が不明瞭なため、行き当たりばったりのサスペンスに終始してることと、全ての学問を吸収した電磁波がそれほど賢くない行動をとるのがちょっと難点ですが、視覚効果畑の監督による特撮満載のスリリングなシーンがずっと続く意欲作でした。