「刑事グラハム 凍りついた欲望」(1986)

 

レクター博士が映画に初登場した作品をU-NEXTで久々に観ました。

 

 

監督はマイケル・マン。予告編はコチラ

 

FBI捜査官でプロファイリングのプロ、ウィル・グラハム(ウィリアム・ピーターセン)殺人現場徹底検証して、犯人の異常心理を自分自身に乗り移らせて、行動を読み取るのがグラハムの捜査スタイル。レクター博士逮捕の一件でかなりの精神的ダメージを受けたため、仕事を辞めてフロリダで妻子とバカンス中でした。そこに元同僚ジャック・クロフォード(デニス・ファリーナ)がやって来て、満月の夜になると起きる連続一家惨殺事件の捜査を依頼。短期間で済むからと熱心に頼まれて渋々仕事を引き受けたグラハムは、異常心理犯罪者の心理を最も知っている男といえばレクター博士だというんで、刑務所に収監中のレクター博士(ブライアン・コックス)助言を求めます。ヘンタイの心理分析が大好物のレクター博士は資料を読んで犯人に関心を持ったのか、獄中にいながら犯人と接触を図ろうとします。

グラハムの動きを嗅ぎつけたタブロイド誌"タトラー"の記者ラウンズ(スティーブン・ラング)がレクターに面会したグラハムの記事を書いたことで、グラハムに興味を持った犯人。レクター博士がタトラー誌を使って犯人に暗号を送っていることを知ったグラハムも、犯人をおびき寄せるためにタトラーの誌面を使って煽ったところ、激高した犯人はラウンズを火あぶりにして殺害。次はグラハムの家族が標的になったので、慌てて家族を安全な場所に保護。3件目の殺人事件を未然に防ぐべく、プロファイリングで少しずつ犯人像に近づいていくグラハム。やがて、2つの被害家族の共通する事実を突き止めて、犯人を特定することに成功。満月の夜に次の獲物を狙う犯人のアジトに直行して、ぶっ殺しておしまい・・・というのが大まかなあらすじ。

原題は「Manhunter」。邦題にありがちな「刑事○○○&副題」という安直なネーミング。雰囲気だけで意味不明な副題。そもそも、グラハムは刑事じゃなくてFBI捜査官です。「羊たちの沈黙」(1991)公開前にレンタルビデオで「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」(1981)のマイケル・マン監督作として観た記憶があり。ディノ・デ・ラウレンティスが製作した「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(1985)がコケたため、原作タイトル『レッド・ドラゴン』(のちに再映画化)を嫌って改題したのが本作。改めて観ると、猟奇殺人サスペンス物としてよりも、家庭向きじゃない仕事一本槍のデキる男の執念をスタイリッシュな映像で(イイ女とのベッドシーン込みで)描く、いつものマイケル・マン節に比重を置いた仕上がりになっています。原作にあった犯人の異常性は、モテない男の憂さ晴らしに矮小化。そんなことよりも夜のシーンをいかにクールに撮るかに異常にこだわってる感じ。撮影は名コンビのダンテ・スピノッティ。少なめだけど、得意のガンアクションシーンもちょっとあり。

グラハム役のウィリアム・ピーターセンは神経質なタフガイを好演。スター性はちょっと弱いかな。盛り上げる劇伴に乗って、犯人の家果敢に突入する場面は名シーンのひとつ。カラフルでバブリーなファッションは、まさに1980年代。レクター博士を演じるのはブライアン・コックスだったんですね。当時の演劇界の注目株をマイケル・マンが映画に初起用。「サクセッション」老獪な独裁者を演じる近年での活躍の方が印象の強い俳優さんですが、アンソニー・ホプキンスのレクター博士にも少し影響を与えているように思えます。IMDBトリビアによると、ラウレンティスが直近で仕事をしていたデヴィッド・クローネンバーグやデヴィッド・リンチも監督候補だったようです。グラハム役にはドン・ジョンソン、ティモシー・ダルトン、ロビン・ウィリアムス、ジェフ・ブリッジス、ケヴィン・クライン等、レクター博士役にはブライアン・デネヒー、ジョン・リスゴー、ブルース・ダーン等が候補に挙がっていたとのこと。シカゴ仲間のウィリアム・フリードキンをレクター博士にというプランもあったとか。あと、ザコキャラで出てくる雑誌記者ラウンズ役の若いあんちゃん「ドント・ブリーズ」(2016)キ●ガイ老人だったのがビックリ。本作では軽口を叩いてるせいで、キチ●イヒドイ目に遭います。