「若いお巡りさん」(1956)

 

名和宏主演のお巡りさん映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は森永健次郎。予告編はなし。

 

上野公園前巡査出張所勤務のマジメな若手警察官の太田(名和宏)。鹿児島県出身で、上野公園にそびえ立つ故郷の英雄、西郷隆盛の銅像敬礼するのが日課の男。地方の家出娘が上野駅でチンピラに狙われて騙されそうなところを助けて臨時就職先を見つけてあげたり、上野公園で窃盗をしている浮浪者を見つけて逮捕するという初めてのお手柄を立てたり、近隣の治安を守るために頑張る日々。出張所には優しい所長と若手警察官4名が勤務していて、太田は一番の下っ端。恋仲の中華料理屋の娘(小田切みき)がしゅっちゅう出前にやって来る先輩や、近くのタバコ屋の娘を口説いて油を売っている先輩(宍戸錠)、奥さんが妊娠中で仕事中も気が気でない先輩(安部徹)が同僚で、お人よしの太田は、出張所の自転車が盗まれた事件で先輩に言いくるめられて自分の責任にされて始末書を書かされたりもしています。

 

赤子を警官に預けたまま逃げてしまった女や、生計を助けるために納豆売りの行商をする小学生、自分が国会議員だと思い込んでるイカれた女(山岡久乃)、骨董品を買った甲冑を身に着けて夜にうろつく会社役員のおっさん、夜中に上野公園の草むらでプレイしようとする新婚夫婦等との警察官たちとのエピソードを描いた後、休日に所長の自宅に招待されて所長の娘の手料理をごちそうになった太田。たまにお弁当を届けにやって来る所長の娘はマドンナ的存在で、太田はひそかに憧れています。その後、娘の縁談が決まって淡い恋心が砕け散るも、赤子を捨てたことを思い悩んで踏切自殺を図ろうとする女性を助けて表彰されたり、田舎に戻ることにした家出娘に表彰された時の報奨金を渡して送り出したりして、太田は警察官としての職務を誠実に全うしていく・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1956年11月14日。田坂具隆監督の「乳母車」の併映作品。92才の現在でも歌手活動を続けている曽根史郎(現・曽根史朗)が歌う往年の大ヒット曲『若いお巡りさん』をモチーフにした日活映画。名和宏と同じ独身寮に住む警官役で曽根史郎本人も出演。年間ランキング2位だった同ヒット曲を劇中で3回も歌います。出張所勤務の警察官の日常と上野公園周辺で起きる悲喜こもごもの出来事を描いたほのぼのとした気持ちにさせてくれる1時間ちょっとのモノクロ映画です。どうってことのない添え物映画ですが、東映ヤクザ映画での貫禄ある悪役の印象がある名和宏と安部徹が純朴なお巡りさんを演じているというのを観たかっただけだったりします。どちらとも市民のために地道に活動する姿がレアな映画でございました。