「必殺! THE HISSATSU」(1984)

 

人気ドラマシリーズの映画版をWOWOWオンデマンドで観ました。

 

 

監督は貞永方久。予告編は見つからず。

 

江戸で六文銭(三途の川の渡し賃とされている)を口に咥えた状態の死体が次々と見つかります。被害者が同業の仕事人だけであることに気づいたおりく(山田五十鈴)遊女お君(浜田朱里)が復讐の依頼に来て、殺された猫の仇討ちだと知って断るというどうでもいいエピソードを挟んでるうちに、別グループの仕事人お甲(朝丘雪路)奇妙な神輿を担ぐ謎の集団暗殺されます主水に近づくお葉という謎の女(中井貴恵)も現れて、自分たちのグループが次の標的になるのではと恐れる中村主水(藤田まこと)。やがて、おりくの調査によって、一連の殺しの黒幕は(かつて、おりくの部下だった)庄兵衛であることを突き止めます。

 

庄兵衛に接触したところ、彼ら六文銭一味で江戸の闇の仕事全てを手中に入れようとしてるということで、全員足を洗うか、江戸から出るか、それとも殺されて六文銭を咥えるかを迫られて追いつめられる仕事人たち。第四の選択肢として庄兵衛一派との全面対決を選んだ主水たちは、助っ人集めを開始。耳かきで殺す中国人(タコ八郎)や鳥を使って殺す仕事人(赤塚不二夫自筆漫画付きの出演)、穴を掘って殺す仕事人(斉藤清六)などが集まりますが、みんなイマイチなのでメンバー入りとはならず。おりくの昔の仲間(草野大悟)もアル中で役に立たず。唯一仲間にできたのは、瓦投げで殺す政(芦屋雁之助)のみ。彼と女房の(研ナオコ)ともども仲間に引き入れて、最終決戦の地に臨むのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1984年6月16日。ドラマシリーズ放送通算600回記念として製作。配給収入6億円強のヒットを記録。当時、放送中の「必殺仕事人IV」が視聴率の面では前シリーズと並んで人気のピークを迎えていた頃で、リアルタイムでよく観てました。なので、私の「必殺」のイメージはこの頃のライトなバラエティ色が強いワンパターン路線だったります。人気を押し上げていたコンビは、オトナの色気の中条きよし(三味線屋の勇次)とクールなイケメン三田村邦彦(飾り職人の秀)で、彼らの大衆演劇的ヒーローのカッコ良さには心地よいマンネリズムがありました。主水の上司の筆頭同心田中(山内としお)や、嫁姑コンビ(菅井きんと白木万理)のコメディリリーフぶりもお約束。いま観ると、藤田まことたまに見せる渋さ山田五十鈴の重鎮感も効いてます。あとは、日本ドラマ史に残る名テーマ曲が流れるだけで心が踊ります。

 

本作は仕事人たちの命が狙われるという設定でTVドラマとの差別化を図ろうとはしているものの、二時間スペシャルを映画館で上映しただけの内容でしかないです。映画ならではのスペシャルなゲストスターは片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)。人形浄瑠璃の花形人形師で、裏の顔は、蝶の形に切った花吹雪が舞う中で扇子に仕込んだ刃で敵を斬る仕事人。ラストの決戦で一度は断った助っ人を買って出て緊急参戦。気品ある殺しの手口で仕事人をサポート。ラスボスの庄兵衛を演じるのは、脚本家の石堂淑朗。大滝秀治に断られたためのキャスティングのようです。印象度の弱い敵キャラをダラダラと倒していくクライマックスはグダグダ。ただ、ゲスト出演を詰め込んだ賑やかな作りで、まあまあ楽しめる映画ではございました。現在では単発の特番で細々と継続している必殺シリーズ。『時代劇+殺し屋』という組み合わせは強力で、日本の景気が良かった頃に海外マーケットも視野に入れた作品づくりをしていれば、また別の発展の仕方をしたのではという気がします。