「てなもんやコネクション」(1990)

 

香港と日本で繰り広げるハチャメチャコメディをU-NEXTで観ました。

 

 

監督は山本政志。予告編はコチラ

 

爺さんの代から香港で水上生活をしている一家に生まれた九扇。TVのクイズ番組でタイ旅行とバリ島旅行と日本旅行が同時に当たったというんで、九扇は恋人の優蘭と日本旅行に行くことに。序盤の設定からすでにデタラメです。しかし、出発直前にフラれた九扇は一人で大阪入り。空港に迎えに来たのは弱小旅行会社の新米クミ(新井令子)。食事は立ち食いうどん、宿泊はカプセルホテル超ビンボーなツアー。新世界や西成地区等のディープな大阪を連れ回されている間に、茜(鈴木みち子)というファンキーなおばちゃんに荷物を全部盗まれて一文無しになった九扇。その後、なぜか茜も車に乗り込んできたので3人で東京入り。ディズニーランドに行くつもりだったのに、一行は間違えて浅草花やしきに到着。ただ、来場記念プレゼントで香港旅行招待が当たったため、運よく香港に戻れることになります。

 

一緒に香港に来たクミと茜も九扇の家に住み着いて、一家のインチキ商売を手伝う生活がスタート。ここで突然、茜役がおばちゃんと室田日出男の二人一役で進行するという字幕が出現。やがて、九扇が住む水辺のエリアに巨大商業施設を建設しようとしている国際的企業に雇われた地上げ屋日本人矢崎(近藤等則)から立ち退きを強要される事件が発生。自分をフッた優蘭が矢崎の愛人になっていてショックを受ける九扇。追い出されるのは時間の問題かとなった時、寝たきりの爺さんに触発されて行動を起こした九扇の母ちゃんに刺激を受けて、一家全員が立ち上がります。コンピューターに詳しい末っ子が矢崎の所有するクレジットカードを大量偽造して2,000億円を使い込んで反撃。資金を失った企業は泣く泣く撤退、一家に平和が戻ってきたのでありました・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1990年9月15日。渋谷に一時的に建設された専用映画館で上映されたインディーズ作品。昔、VHSビデオで1回観て以来。破壊力は薄れていませんでした。ボンクラ香港人青年がインチキ日本旅行に翻弄される前半と、バブル景気の日本も絡んでいる国際的大企業としがない香港のインチキファミリーが対決する後半の二部構成。当時の香港と大阪が持っていた雑多なエネルギーを詰め込んだ異色作。コギレイな東京シークエンスでも、浅草花やしきがちょっとだけ猥雑さに貢献。九扇の家族は、父がインチキ占い師、母が偽ブランド品の露天商、妹と弟がチビッ子スリ集団、末っ子が天才ハッカーというロクでもないメンバー。でも、話全体のデタラメな展開の味付けの濃さの方が勝っているため、ちょっとおかしな家族程度にしか感じません。

 

見慣れない役者陣の中で数少ないネームバリューがある室田日出男が途中降板したことで、同一キャラをおばちゃん室田日出男の二人がコロコロ変わりながら演じている異常事態も気にならないくらい、異様なごった煮の世界観が映画を覆い尽くしています。そして、もうひとつの見どころは、なかなか撮影されることがない西成地区飛田新地のロケ場面。リアルな街並みとリアルなおっさんたちの濃ゆい生態貴重です。ここのドキュメンタリーパートが長め。横道に逸れるエピソードだらけでストーリーが破綻しそうで意外に筋は通っていて、でもやってることはバカ騒ぎだけという“アホは国境をこえる”のキャッチコピーに偽りのない怪作でございました。