「荒鷲の要塞」(1968)

 

リチャード・バートン、クリント・イーストウッド共演の戦争スパイ活劇をU-NEXTで観ました。

 

 

監督はブライアン・G・ハットン。予告編はコチラ

 

時は第二次世界大戦。アメリカ陸軍のカーナビー将軍が飛行機事故でドイツ軍の捕虜となってしまいます。自白(自白剤はもちろんスコポラミン!)を強要されて連合国の最重要機密(軍事作戦)が漏洩するのを防ぐため、英国軍情報部(MI6)の提督とターナー大佐は将軍救出作戦を立案。選ばれたメンバーはスミス少佐(リチャード・バートン)以下、英国軍情報部員6名と、殺しのプロであるアメリカ陸軍のシェイファー中尉(クリント・イーストウッド)を合わせた7名。ドイツ軍がカーナビー将軍を監禁しているのは、アルプス山脈の断崖絶壁にある「鷲の城」と称される難攻不落の城塞。鷲の城にはドイツ軍が管理するロープウェイで行くしかありません。輸送機からパラシュートでアルプス山中に落下、近くにある城下町経由で鷲の城に潜入して将軍を奪還、逃亡する目論見ではありますが、至難の業です。

 

そもそも捕虜となっている将軍はニセモノで、ドイツ軍の内情を探るために送り込んだ作戦であることがすぐに分かります。なぜ断崖絶壁を舞台にこんな作戦を実行したのかというと、その方が冒険アクションとして面白いからです。また、スミス少佐だけは女性スパイを使って鷲の城に別ルートから潜入させる作戦も進めています。どうやらメンバー内にドイツ軍のスパイが紛れ込んでいる疑惑があるため、極秘に動く必要があるようです。実際、パラシュート落下時に1名、城下町到着後すぐに1名、メンバーが殺されるアクシデントが発生。ドイツ軍に情報が筒抜けなのは確かで、残った5人も確保されそうになりますが、間一髪、スミス少佐とシェイファー中尉だけが逃げ切ることに成功。そして先乗りした女性スパイと共に、コンビで鷲の城に乗り込むのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

初見は水曜ロードショーだったので、今回初めてフルバージョンで視聴。原題は「Where Eagles Dare」。シェークスピアの『リチャード3世』のフレーズからの引用のようです。「鷲が挑む場所」みたいな意味か。冒険小説の名手アリステア・マクリーンが映画用に作ったオリジナル脚本。少しゆったりめながら、今でも十分に楽しめるスリリングなシーンの連続。劇伴も緊張感を煽ります。賢そうに見えるドイツ軍の幹部たちは無策で、敵はカンタンに死ぬのに、味方には弾が当たらないというお約束はご愛敬。「ナバロンの要塞」(1961)で描いていた戦争に翻弄される人間ドラマ要素をバッサリ省いて、アクションに全振り。敵を欺くにはまず味方からということで、リーダーのスミス少佐の言動がいろいろと不可解。彼自身が敵なのか、味方なのか。両軍に二重スパイがいるため、騙し合いの会話劇としてもサスペンスフル。「お前らがスパイだ」「違う。お前こそスパイだ」「俺は二重スパイだ。お前らはウソつきだ」「いや、ウソをついてるのはお前だ」「ウソだよーん」といった丁々発止のやりとり。作戦の本当の目的、真の裏切り者が分かるのは終盤になってから。

 

アクションの大部分はダイナマイト爆破。とにかく、ダイナマイトでどこでも盛大に爆破。そして、最大の見どころはロープウェイのシーン。高所恐怖症の私にとってはハラハラが止まりません。実写と特撮を交えて巧く描いてます。逃走用に使う除雪機能付きのバスのフォルムが印象的。アメリカの助っ人の力を借りて敵を倒す英国スパイというのは、ジェームズ・ボンドとCIAのフェリックス・ライターの関係性と同じ。リアリティラインも当時の007シリーズと同じ程度。本作では、アメリカ人エージェント役のクリント・イーストウッドがアクションパートのほとんどを請け負ってコキ使われています。女性とイチャつくパートは、主役のリチャード・バートンが担当。撮影ロケ地にはリチャード・バートンの奥さんだったエリザベス・テイラーも見学に来てた模様。IMDBトリビアによると、スミス少佐役にはマイケル・ケインが、シェイファー中尉役にはリー・マーヴィンが候補に挙がっていたとか。また、リチャード・バートンとアリステア・マクリーンのお墓はスイスの同じ村にあるそうです。