「少林寺木人拳」(1976)

 

初期のジャッキー・チェン主演作をU-NEXTで観ました。

 

 

 

監督はロー・ウェイ。実質的に監督していたのは、「蛇鶴八拳」(1978)等のチェン・チーホワ。

 

幼少時に殺された父の仇を討つために少林寺の門を叩いたイーロン(ジャッキー・チェン)。入門二年目の未熟者で、先輩たちからは口を聞けないことでよくからかわれています。修行したい情熱だけは人一倍あるイーロンを見て、酔っぱらいの指導官尼僧からちょくちょくカンフーの技を教わったりもしています。ある日、寺からちょっと離れた洞窟に監禁されている男ファユー(カム・コン)がいることを知ったイーロン。何らかの大罪を犯して、少林寺の上層部の指示によって監禁されているようです。鎖に繋がれた男に興味を持ったイーロンはこっそりと食事の差し入れをして気に入られて、お礼として少林拳の技を伝授してもらいます。ディフェンシブな考え方の尼僧から教わる心得とは正反対で、とにかく急所を狙え、ひたすら殴り続けろ、がモットーの攻撃的なおっさん。それぞれの技を吸収してメキメキと腕前が上達していったイーロンは、卒業試験を受けるまでに成長。

卒業試験とは、"木人"という木製人形軍団と戦って時間内に撃破するという難関で、これをマスターすると、免許皆伝となって下山を許されるシステムとなっております。これが前半のクライマックス。やたらと強い木人軍団をなんとかやっつけて、卒業の証となる龍と虎の焼印を両腕に刻み込む儀式を経たイーロンは下山。やがて、ファユーも少林寺を脱走。追跡していた少林寺の高僧たちに捕まりそうになっているところをたまたま見かけたイーロンが機転を利かせてファユーを助けますが、しばらく一緒にいる間に人を平気で殺す極悪人であることを知ったイーロンはファユーと別れます。少林拳の腕がまだまだ半人前だと悟ったイーロンは少林寺の高僧の元を訪ねて、再度修行を重ねますファユーをリーダーとするヤクザ組織が少林寺への復讐のために殴り込みに来ることを知ったイーロンは少林寺の側に立って、師匠であるファユーとの一騎打ちとなるのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。
 

原題は「少林木人巷」。字幕版で観たのは今回が初めて。TV放映時には日本での劇場公開時に加えられた主題歌「ミラクル・ガイ」も劇中で流れていて、少年漫画チックに盛り上げる音楽の効果もあったので、それに比べると字幕版は少し地味です。二重瞼の整形前のジャッキーには全く華がありません。自分だけいろんな人から奥義を教わるエコひいきぶりで強くなるラッキーボーイの役どころ。ストーリーのオチとしては・・・、イーロンの父を殺した悪人の正体はファンユーだったという衝撃の結末が待っていて、自分を育ててくれた師匠が仇になる切ない展開がドラマチックです。何よりも、本作最大の見どころである木人と戦うというギミックがサイコー。動きの鈍い木人が強い設定になっていること自体は謎ですが、絵的に素晴らしいです。言葉がしゃべれないイーロンの怒りが頂点に達した時の表情も素晴らしい。他に、オープニングで五獣拳と戦う長いシーン特訓中に肩甲骨がせり出す場面、少林寺近辺にある大きな滝(ロケ地の台湾にある十分瀑布)、自分の目を潰す高僧なども強い印象を残します。なお、下山したイーロンが食事している店で娘にちょっかいを出すチンピラの一人にユン・ピョウが出演しています。