葛飾北斎の物語をWOWOWオンデマンドで観た。
監督・脚本は新藤兼人。
鉄蔵と娘は、下駄職人である左七の家に居候中。鉄蔵(緒形拳)は、貧しい農家出身から、御用鏡磨師である中島伊勢の養子となり、絵の才能を認められて絵師を目指すも、奔放な性格から何度も師匠に破門されて、独学で絵師の修行中の身。のちの葛飾北斎。鉄蔵を居候させている左七(西田敏行)は武家の出であるものの、読本作家を志し、下駄屋に婿入り。日中は稼業を継ぎながら、夜に執筆活動をする勤勉な男。のちの曲亭馬琴。年上女房のお百(乙羽信子)は、佐七の作家志望を快く思っておらず、居候のくせに威張っている鉄蔵と娘のお栄(田中裕子)が邪魔でしょうがなく思っています。そんなある日、鉄蔵はお直という魔性の女に出会って一目惚れ。彼女をモデルにしたデッサンにのめり込もうとしますが、肉欲が前面に出てきてしまったため、しばらく養父の伊勢(フランキー堺)にお直を預けることに。すると、伊勢もお直の魔性にとり憑かれた挙句、首をくくって死んでしまいます。
同じ時期、佐七のお百も亡くなってしまい、作家業に専念した佐七は流行作家となっていきます。一方、依然うだつの上がらない鉄蔵はとうがらし売りや大道芸や屋外パフォーマンスなどでなんとか生計を立てていきますが、腐れ縁の佐七のサポートで読み物の挿絵をすることになり、ようやく名が売れ出します。放浪の旅に出て「富嶽三十六景」も生み出していく鉄蔵。というところからいきなり老人になった三人に時は変わって、鉄蔵、お栄と佐七の三人は相変わらず近所付き合いをしていました。老いたとはいえ、お栄はずっと佐七が好きだったと言い出して同じ布団に入ったり、かつてのお直ソックリの女性が現れたことで、鉄蔵の画家魂が再燃、ヌードの女にタコを絡めた絵を一心不乱に描き始めたり、三人の情熱は衰えていません。その時、完成したのが「蛸と海女」。その後もケンカばかりで仲良しの鉄蔵と佐七ですが、長生きしていた二人にも寿命が近づいてきて・・・というのが大まかなあらすじ。
劇場公開は1981年9月12日。英語版タイトルは「Edo Porn」。ポルノといえば、ポルノですね。その昔、ゴールデン洋画劇場にて裸目当てで観た記憶あり。それにしても、裸が多すぎ。田中裕子と樋口可南子が奮発しています。前半は画家として芽が出ない北斎の生活ぶりの一部を、後に大成するクリエイターとの交流を絡めて描いています。十返舎一九(宍戸錠)、式亭三馬(大村崑)、歌麿(愛川欽也)が周辺人物として登場。男達も負けじとハダカになります。後半の老後シーンは意外に長く、延々と老人コントが続きます。北斎の生涯をおさらいする内容ではなく、面白エピソードのみをチョイスして繋いだ大胆な構成。樋口可南子演じるお直が人生を変えるほどの魔性の女には描けておらず、主人公の北斎の破天荒さも想定の範囲内のものでしかない点は不満。むしろ、田中裕子演じるお栄の無防備なエロの方に破壊力を感じました。ババアになってもチャーミング。オッパイを吸う老人のシーンが2回もあるのは、作り手の願望が出ているかも。ただ、昭和の邦画特有のジメッとした空気を帯びてないところは貴重で、他のどれとも似ていないオリジナルの存在感を放っている艶笑喜劇として、一見の価値がある作品だと思います。