「スターフィッシュ」(2018)

 

SFスリラー調で内省的な物語をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本・音楽はA・T・ホワイト。予告編はコチラ

 

以下は、公式サイトのストーリーの引用です。親友グレイスを失ったオーブリー(バージニア・ガードナー)。悲しみに耐えきれず、グレイスの家に忍び込む彼女だったが、翌朝目覚めると人々の姿が忽然と消え、見慣れた街は怪物が闊歩する異様な世界に変貌していた。これは現実なのか幻なのか?わずかな手がかりはトランシーバーから漏れ聞こえる男の声。そしてグレイスが遺した1本のカセットテープ。街のいたるところに隠されたテープを集めて信号を解読すれば世界が救える。親友が遺した謎のメッセージを信じて、オーブリーは決死の覚悟で扉を開けて外へ飛び出していく・・・というのが大まかなあらすじ。

 

地元ラジオ局でパーソナリティをしているらしいオーブリー。親友を亡くしたばかりで心の整理がつかず、その傷ついたオーブリーの心象風景がビジュアライズされていく内容。この世は自分以外誰一人いなくなった世界になってしまい、得体の知れない怪物がうろついています。手にしたトランシーバーから生存者らしい男の声が流れて、世界を変えてしまった"信号"の存在を知ります。その信号の謎を解明できるのは、グレイスが遺した7本のミックステープ。グレイスにゆかりのある場所に隠されたテープを全部見つければ世界を救えるということで、各地をさまよって探し出していくオーブリーの行動が、再生されたミックステープから流れる音楽に乗って展開されていきます。

 

要は、大切な人が亡くなってしまった今、世界は終わったも同然だと悲嘆にくれる一人の女性の心の中を様々なイメージを駆使して表現しているお話です。たぶん、同様の事態が起きた作り手が、その時に実際に感じた気持ちや駆け巡ったイメージがベースになっているのではと思われます(友人の死と離婚を経験した監督本人が自身のセラピーを兼ねて書き上げたものがベースになっているとのこと)。インディーズ映画にありがちな、独りよがりで長ったらしい作品になりそうなところを、品の良いイマジネーションを繋ぎ合わせた静謐な映像とほど良い音楽のおかげで、物語にスーッと入っていけます。映像の間合いが絶妙なんでしょう。カッコ良さげでオシャレな映像スタイルも、主人公の気持ちに寄り添うラインを遵守しているので、嫌味な印象を与えません。グレイスの死を悼んで悲しむオーブリーという心象風景の世界から逸脱して、悲しむオーブリーを撮影している映画撮影の現場というフィクションの枠を超えた世界が出てきたときはビックリしました。

 

主人公オーブリーを演じるバージニア・ガードナーの透明感のある佇まいが映画の世界観にマッチしていましたね。ちょっとグロがありますが、ほとんどエロはありません。なお、アニメパートもあり、手塚プロダクションが手掛けています。また、プロデューサーの一人に石田淡朗という人の名がありました。能・狂言の子役というキャリアからスタートした、ロンドンを拠点に活動している俳優さんとのこと。ちょっと出演もしています。あと、エンドクレジットの文字が異常に小さいのも要注目。多感な乙女ではないので感情がシンクロすることはありませんでしたが、なかなか他では味わえない、とても良い映像体験でした。