「死の接吻」(1947)

 

 フィルムノワールの名作をAmazonプライムビデオで観ました。

 

 

監督はヘンリー・ハサウェイ。予告編はコチラ

 

仲間とデパートの宝石商を襲撃した前科者ニック・ビアンコ(ヴィクター・マチュア)は逃走中に警官に撃たれて1人だけ逮捕、懲役20年の実刑を食らいます。地方検事補ディアンジェロ(ブライアン・ドンレヴィ)に共犯者の名を白状すれば仮出所させてやると持ちかけられるも、ニックは拒否。分け前をもらえずに生活に困窮した妻が生活に困って2人の子を残して自殺したことを服役中に知ったニックは、司法取引に応じることに。共犯者だけでなく、彼らの顧問弁護士ハウザーの悪事を突き止めた司法側は、弁護士が裏で操っている殺し屋(リチャード・ウィドマーク)を罠にハメて刑務所送りにしようと画策。旧知のニックを仮出所させて殺し屋と接触させて情報を得た後に殺し屋を逮捕、絶対有罪にすると言われて証言台に立ったニックですが、ハウザーの巧みな弁護により殺し屋は無罪放免となってしまいます。新しい妻(コリーン・グレイ)孤児院から連れ戻した2人の娘と幸せに暮らそうとしていたニックに、報復を狙っている殺し屋の魔の手が忍び寄ってきて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

フィルムノワールの主人公は孤独な一匹狼であることが多いので、妻子持ちである設定は珍しいです。愛する家族を持っている人が犯罪者になってはいけません。独身者でもいけませんが。ヴィクター・マチュア演じるニックが家族のために犯罪から足を洗う設定になっている分、アウトロー感は薄まっていて、お行儀の良い主人公像になっています。獄中のニックを慕って後妻になる役でコリーン・グレイが登場。なぜにニックに心惹かれるのかが謎の存在ですが、美人なので良し。また、のちに名脇役となるカール・マルデンも刑事役で出演。そして、不気味な笑い声を出しながら標的の母親を階段から突き落とす、非情な殺し屋として一躍脚光を浴びたのが、リチャード・ウィドマーク。これがデビュー作で、いきなりアカデミー賞助演男優賞にノミネート。映画そのものよりも、この殺し屋ぶりの方が有名かも。当時としてはかなりの極悪キャラだったんでしょう。NYロケの多さも当時としては珍しかったとのこと。"当時としては"のフィルターをかけて観ないと、ヌルいと感じる部分はあります。また、当時のハリウッド映画としては珍しく、トイレが映っているシーンがある作品でもあります。

 

原題は「Kiss of Death」。英語では"災いをもたらす行動"という意味もあるようです。監督のヘンリー・ハサウェイは、西部劇を中心に娯楽映画をコンスタントに作った人。脚本はベン・ヘクトとチャールズ・レデラー。両者ともハリウッドを代表する名脚本家。「マンク」でも主人公ハーマン・J・マンキーウィッツの友人として登場する2人。チャールズ・レデラーは両親が離婚後、叔母の女優マリオン・デイヴィス(新聞王ハーストの愛人)にハリウッドで育てられたという経歴の持ち主。オーソン・ウェルズとは、彼が「市民ケーン」でハーストと叔母の話を映画化したことで干されてしまった後も友情が続いていたそうです。