「女渡世人」(1971)

 

藤純子の女渡世人シリーズ第一弾をYoutubeで観ました。無料配信は今日21時までのようです。

 

 

人情モノを絡めたオーソドックスな任侠映画。監督は小沢茂弘。

 

大正末期の上州。渡世の義理でヤクザの親分を叩き斬った女渡世人お駒(藤純子)が賭場の帰りに襲われます。親分襲撃のリベンジを狙う子分たち。不意に訪れたピンチを偶然通りかかった一匹狼の流れ者、常次(鶴田浩二)に助けられます。同じ宿にいて病気を看病してあげていたお夏という女の子が偶然にも常次の娘だという縁で親しくなるお駒と常次。そんな時、草鞋を脱いでいた一家の出入りで助っ人をすることになった常次は、死んだ女房の故郷、信州へ行って娘を預けてほしいと頼まれます。到着した女房の実家は温泉宿を営んでいますが、地元のヤクザである石割組が乗っ取りを企んでいました。お駒は実家の温泉宿を救うため、石割組の親分(遠藤辰雄)盾突きますが、偶然にも親分の妾であるお滝(木暮実千代)がかつて生き別れてずっと探していた実の母だったことが分かります。あくどい親分がお夏を誘拐してお駒をおびき出して殺そうとしていることを知ったお滝はお駒をかばって銃弾に倒れます。母を殺された後も執拗な温泉宿いじめをする石割組に落とし前をつけようと、お駒は上州から戻って来た常次と共に討ち入りに行くのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1971年1月23日。同時上映は「カポネの舎弟 やまと魂」。東映のタイトルクレジットにはいくつかのフォントのパターンがありますが、個人的には筆書き風のフォントの方が好みで、今作の崩した書体のクレジットもわりと好みです。お駒が母と別れた過去を回想するシーンの映像処理のチープさが妙に印象に残りました。ストーリーもキャラ設定も目新しさは全くありません。しかし、不世出のスター、藤純子の凛々しさを存分に堪能できます。ちょっと音程の外れた歌唱力も再確認できます。ちなみに、続編は数ある任侠映画の中でも傑作の部類に入ると思っています。

 

今作での共演は鶴田浩二。しっとりとした情感があって華がある男女のマッチング。娘が縁で、渡世人の義理を重んじる者同士が惹かれ合っていきます。最後、一緒に討ち入りに行くことがラブシーンの代わりになっているようにも見えます。他の映画でもそうですが、大立ち回りをして少し髪がほつれた時の藤純子はさらに美しさが増します。木暮実千代が生き別れの母役で、加藤泰監督の「瞼の母」と同じようなキャラを演じていました。遠藤辰雄の憎々しさも安定感があります。子分の一人である汐路章もちょこちょこ映っていて、大げさに死んでいきます。他には、広瀬義宣が藤純子の舎弟として、かなりセリフの多い役を熱演していました。コメディリリーフとしては、白木みのると正司敏江・玲児芦屋雁之助あたりがチョイ役要員。あと、水森亜土が脇で出ていたのはレアかも。なお、初見では蓑和田良太をすぐ見つけられませんでしたが、温泉宿の爺さんが病に伏せている場面でメガネを光らせて1~2秒程度出演してるのをようやく探し出せました。