マイケル・ケイン主演のシニカルなラブコメをU-NEXTで観た。
夕暮れの車中で行きずりの人妻シディと浮気しているアルフィー(マイケル・ケイン)。定職につかず、フラフラと女を渡り歩いてるこのプレイボーイが映画の主人公。事あるごとにアルフィーが画面に向かって自分語りをするスタイルで映画は進みます。ダンディーで物腰も柔らかいアルフィーは女にモテモテ。絵に描いたような軽薄さで同時に数人の女性と関係を持つ綱渡りライフを楽しんで生きてます。都合のいい女ギルダをキープしつつ、女医やクリーニング店員、裕福なご婦人ルビー(シェリー・ウィンタース)など、幅広い品揃え。田舎娘アニーを自宅に住まわせながら、自身が入院した時には看護師と仲良くなって、退院した時には同室だった男の妻リリーと不倫をするといった感じで、女漁りはとどまることを知りません。
しかし、便利に使っていたギルダが妊娠したことで、少し雲行きが変わっていきます。出産するかどうかは君次第と言って責任をスルーしたアルフィーに対して、産むことを決意したギルダ。産まれてきた可愛い男の子に愛情を感じつつも、今まで通り奔放な生活を続けるアルフィー。やがて、ギルダは以前から自分を一途に思ってくれている男を選んで、アルフィーの元を去っていきます。そして、人妻リリーも妊娠が判明。病院で治療できる期間を過ぎていたため、自宅にヤブ医者を呼んで中絶すること選択しますが、胎児の亡骸を見てショックを受けるアルフィー。息子のことを思い出してギルダの住む家を訪ねるも、新しい家庭で幸せに育っている姿を見て黙って去っていくアルフィー。今度は、金持ちの婦人ルビーに慰めてもらおうとするも、さらに若い男を見つけたようで捨てられてしまいます。失意の中、偶然再会した人妻シディにもう一度声をかけるも適当に交わされて相手にされません。気がついたら、完全に孤独になっていたアルフィー。なすすべもなく、寂しげな表情を浮かべてひとり街並みを歩くアルフィーであった・・・というのが大まかなあらすじ。
舞台劇の映画化で、原作・脚本はビル・ノートン。スタイリッシュな映像でテンポ良く進むコメディ。チャラい色男のいい加減な女性遍歴をしょーがないなと半ば失笑気味に楽しんで観ていると、後半から少しずつ重くなっていきます。特に、中絶の箇所はそこまでの筋運びが軽い感じで来ていただけにショッキング。当時、中絶を映画で扱うのはタブーとされていたため、舞台で主演を務めていたテレンス・スタンプは映画出演を拒否、代わりに親友のマイケル・ケインにオファーが回ってきて、彼の出世作となりました。チャラい行動と裏腹の冷たい眼差しが利いてます。エンディングのバート・バカラック作曲でシェールが歌う主題歌が流れるタイミングもバッチリ。米国のアカデミー賞では、主演男優賞でマイケル・ケイン、助演女優賞では人妻リリー役のヴィヴィエン・マーチャントがノミネート。007シリーズのイメージが強いルイス・ギルバートの演出も上手いです。
なお、ジュード・ロウ主演のリメイク作はオリジナルをベースにしつつも、ロンドンからNYに舞台を変えて、よりオシャレになっています。中絶のエピソードは違う展開になっていて、違った味わいがありました。スタッフの顔写真入りのエンディングクレジットもオリジナルと同じでカッコイイです。アルフィーが出会う女優さんたちの魅力はリメイク作の方が上かな。