「君が若者なら」(1970)

 

深作欣二監督の青春映画を動画サイトで観ました。

 

 

主演は石立鉄男と前田吟。劇場公開(松竹配給)は1970年5月27日。

 

昭和40年代の日本が舞台。月賦で買った1台のトラック。幼馴染の喜久男(石立鉄男)麻男(前田吟)は手に入れたトラックを前にして感慨深げ。二人はこれまでの道のりを振り返ります。九州の炭鉱町出身の二人は"金の卵"として集団就職で上京。最初に務めた町工場で、佐渡の漁師の息子の清(河原崎長一郎)、北海道の開拓集落出身の竜次(峰岸徹)、川崎出身の労働者の息子の一郎(林秀樹)の三人と知り合い、仲良くなります。でも、工場はすぐ潰れます。次の職のアテのないまま、あるキッカケでチンピラとケンカして放り込まれた留置場で、五人はいつか独立して運送会社を設立するためにトラックを買うための積立を始めようと誓います。非正規雇用の職を転々としながら、なけなしのお金から毎月積み立てに回す五人ですが、清が目先の金欲しさに盗みを働いて刑務所入り、竜次も目先の金欲しさにストライキのピケ破りに参加して警官に殴られて死亡、一郎はバイト先のホステスを妊娠させてしまって主夫活動に入って脱落、気がつくと、仲間は喜久男と麻男だけになってしまいます。そんな逆境から懸命に働いて、念願のトラックをようやく購入する日を迎えたのでした。

 

喜久男は獄中にいる清を心配して母と上京した妹ユキ子(寺田路恵)と恋仲になり、明るい前途が見え始めた頃、清が脱獄、二人のアパートに逃げこんできます。逃走中に警官に撃たれた清は死ぬ前に故郷の海を見たいと懇願、麻男は反対する喜久男を押しきって、トラックで出発。やっとのことで日本海が見えた時にはすでに清は絶命。ヤケになった麻男は車ごと崖から転落、愛車のトラックは爆発、一命をとりとめた麻男は逮捕。突然の悲劇でいろんな物を失った喜久男は、何だかかえって清々しい気持ちとなって再出発を心に誓うのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

文学座と左翼系の新星映画社の共同製作。俳優座が新星映画社と作った「若者たち」(1967)の映画版に対抗してできた作品なんでしょうか。貧しい労働者のジメっとしたツライ青春群像劇を、序盤から斜めの構図やグラグラと画面が揺れるカメラワークといった深作欣二らしさ全開の映像で一気に突っ走っていきます。清の脱獄あたりからは物語もどんどん暴走、アメリカンニューシネマっぽくもなっていきます。なにか事が起きるたびに流れる、いずみたくの音楽はちょっとしつこいかも。髪の毛がチリヂリになる前の石立鉄男とやたら喧嘩っ早い前田吟の若々しい演技は貴重です。あと、麻男と一夜を共にすることになる竜次の姉役で小川真由美が、一郎が結婚することになるホステス役で太地喜和子も出演しています。基本的には、石立鉄男だけがマトモで、残りの四人は自業自得で自暴自棄になっていく映画でした。深作欣二・新星映画社の組合せは、2年後に反戦映画の傑作「軍旗はためく下に」(1972)を発表します。