「七つの弾丸」(1959)

 

三国連太郎が銀行強盗を演じる犯罪ドラマをAmazonプライムビデオのJUNK FILM by TOEIで観た。

 

 

地味なモノクロ映画ですが、良作でした。監督は村山新治。脚本は橋本忍。

 

昭和30年に大阪で起きた銀行強盗事件をベースにした作品。いろいろレビュー等を検索していたら、こちらの記事が素晴らしすぎました。接点のない犯人と3人の被害者の生活を丁寧に描きながら、終盤に起きる強盗事件で不幸にも4人が繋がってしまう流れとなっています。ロケ撮影によるリアルな街並みと共に、当時の庶民の生活ぶりの一面がうかがえる社会派の色合いも強い内容。

 

東京・新橋の銀行の下見をする矢崎(三国連太郎)。彼は高校を出て北海道から上京してきたものの、大卒の資格がないためになかなか自分が望む仕事にありつけません。職を探して旧友を訪ねた神戸で空腹と日射病で倒れたところを警察官に助けられます。衝動的に派出所で拳銃を奪って逃走、浜松と名古屋での白昼の銀行強盗であぶく銭を手にした矢崎。開業医を目指す恋人(久保菜穂子)の開業資金のために、もう一度だけ銀行強盗を企んでいます。

 

銀行務めの真面目なサラリーマン安野(今井俊二)。同僚との結婚を控えて、結婚式を豪勢にする・しない、親元を離れて暮らす・暮らさないを母と揉めてたりする、どこにでもいる東京生まれの普通の青年。その銀行そばで勤務する警察官江藤(高原駿雄)。日々の巡査仕事をしながら、昇進試験に向けて地道に勉強している青森の貧農出身の青年。新橋周辺を仕事場とするタクシー運転手竹岡(伊藤雄之助)。出稼ぎ先の東京での浮気が妻にバレたのを機に、田舎で貧しく暮らす妻子たちのために心を入れ直して働こうとしていた中年オヤジ。前半では、犯人矢崎を含めて、強盗事件前の4人の生活ぶりが並行して淡々と描かれていきます。

 

いよいよ、銀行強盗決行当日。強盗をしている間だけ気を失わせるつもりで銀行そばの派出所の江藤巡査を襲ったが、激しい抵抗に遭ったため、銃で射殺してしまいます。いきなり予定が外れた状況のまま、銀行で強盗を働く矢崎。たまたま銀行の金庫にお金を預けようとしていた銀行員安野が銃殺されます。安野が手にしていた多額の現金が入った袋を持って銀行を出る矢崎。派出所での発砲で、銀行前にはすでに人だかりができていましたが、銃で威嚇して人波を突っ切って逃走する矢崎。警察の追っ手を振り切るためにたまたま通りかかったタクシーを捕まえて逃亡を続けます。道中でエンストのフリをして時間を稼ごうとした運転手竹岡の行動に気づいた矢崎は竹岡も射殺します。警察に包囲されて、銃弾も切れてしまった矢崎は、あっさり捕まってしまいます。

 

矢崎は死刑宣告を受けて、しばらくして処刑されます。エンディングでは、たまたま犯行現場に居合わせただけで殺された3人の周辺にいた人たちのその後が描かれています。その中でも、一家の大黒柱のタクシー運転手竹岡を失って、ますます生活に困った妻(菅井きん)がデパートで万引きをして、子供たちが見ている前で警察に逮捕されるシーンがやるせなかったです。殺人という所業による負の連鎖をありのままに突き付けられて、等身大の痛みを刻まれました。一つの事件簿を丁寧に追っただけの映画ですが、ぜんぜん関係のなかった4人の人生が終盤の強盗事件で交差していく構成が面白かったです。核家族化や、都会と地方の経済格差、学歴社会などの当時の社会問題も巧みに取り込んでいます。名脚本家の橋本忍によるロジカルな脚本と、セミドキュメンタリータッチの演出で定評のある村山新治のタイトな演出がうまく融合した、小粒だけどピリッとした一品でございました。あと、のちに今井健二と改名する今井俊二がこの頃は強面じゃなく、庶民的な銀行員役だったのが少し驚きました。また、助監督のクレジットに深作欣二の名前がありました。