「皆殺しのバラード」(1966)

 

ジャン・ギャバン主演のギャング映画をU-NEXTで観ました。

 

 

東京ロケ場面があることぐらいしか特徴のない映画でした。

 

オシャレなオープニングタイトルから、パリの空港に降り立つ老紳士。"ダイヤのポロ"の異名を持つパリの暗黒街の大物(ジャン・ギャバン)。表向きは素敵なキャバレーの経営者で、裏では世界各国に金の密輸をしています。東京も密輸ルートの一つであり、一般人に運ばせた金塊を高価な骨董品に替えて持ち帰らせて、相棒の古物商ウァルター(ゲルト・フレーベ)が現金化しているようです。風俗嬢に貢いで金に困っている堅気の外国人を運び屋に利用していて、直近の東京ルートの密輸は風俗嬢リリー(ミレーユ・ダルク)から紹介されたアメリカ人新聞記者が実行しました。

 

実は、このアメリカ人記者は諜報機関のスパイで、自らが運び屋となって組織に潜入して、密輸ルートの解明と撲滅を狙っていることが分かります。一方で、ポロの仕事仲間だったロンドンやミュンヘンのボスに続いて、脅迫されていたウァルターも何者かに暗殺されて、ポロ自身の命も狙われる暗殺未遂事件が起きます。取り押さえた実行犯の証言から、旧知のミラノのボスが指令を出していて、さらにその背後にいる黒幕はニューヨークのボス、チャールズ(ジョージ・ラフト)で、ポロの密輸ルートを奪おうとしていたことが判明。※映画.comのあらすじでは、チャールズも諜報機関が送りこんだスパイと書かれていましたが、映画ではそのように描かれてません。

 

チャールズはポロに密輸ルートの利権譲渡を直談判するため、各国のボスをパリに集結させて首脳会談を緊急開催。暗殺未遂事件時にポロの命を救ってボディガードに昇格していたスパイを通じて首脳会談の情報を入手した諜報機関は、現地警察と組んでホテルを全面包囲して一斉逮捕を狙います。ポロは素直にチャールズの要求を受け入れると見せかけて、時限爆弾を鞄に忍ばせてホテルに乗り込んでいく・・・というのが、大まかなあらすじでした。

 

宝石強奪映画の傑作「男の争い」(1955)でも有名なオーギュスト・ル・ブルトンが原作。この映画の3年前には、同じ原作者の「東京の喧嘩」(1963)という銀行強盗映画(日本未公開、予告編)が作られているようです。今回観た映画は、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、アメリカのギャングが国際密輸ルートの利権をめぐって血生臭い抗争劇を繰り広げるスケールの大きそうなお話ですが、筋運びが煩雑で、説明不足で、ゴチャゴチャした展開のまま、ラストまでなだれこんでいった印象。貫禄ある俳優たちの余裕たっぷりの演技と事件の急展開感がミスマッチ。ただ、ジャン・ギャバンとジョージ・ラフトの二大ギャング俳優の顔合わせは貴重で、ドイツの名優ゲルト・フレーベも含めた仏米独の三大スターの共演が唯一の見どころでもあります。「フレンチ・コネクション」(1971)で強面の殺し屋役だったマルセル・ボズフィがポロのボディガード役として出ずっぱりだったのが、個人的にはうれしかったです。なお、ポロが可愛がっていた犬は残念ながら殺されてしまいました。