「日本侠花伝」(1973)

 

加藤泰監督の任侠映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

DVD・ブルーレイ化されておらず、あまり観られる機会の少ない作品。

 

前年のNHK朝ドラのヒロインを務めた真木洋子(まきひろこ)が主演。大正6~7年(1917-1918年)の西日本が舞台。第一次世界大戦や米騒動を背景にして、侠客の妻となった女性の半生を描いた、東宝での唯一の加藤泰監督作品。原作と脚本も兼ねていて、代名詞でもあるローアングルショットも満載。相手役は渡哲也。北大路欣也加藤剛もちょっとだけ出演してました。企画に葉村彰子のクレジットも。駆け落ち、暗殺、無理心中、不倫、セックス、拷問など、NHK朝ドラでは作れないアウトローのヒロイン成長物語となっていました。もともとは浅丘ルリ子主演の日活映画として製作予定だったらしい。

 

第一次世界大戦中の大正6年。九州・筑豊地区を走る列車内で、駆け落ちした実(村井国夫)との生活のために書籍を売り歩いているミネ(真木洋子)。そこで、同じ列車に乗っていて代議士を刺殺した清次郎(渡哲也)と運命の出会いをします。逃亡した清次郎と対照的に、たまたま近くにいただけで共犯者とみなされて投獄されてしまったミネと実。容疑が晴れて釈放されたミネと実は小倉に移動、ミネは監房で知り合ったつる(任田順好)と共に女給として働いて、(四国・宇和島のボンボンで自分では全く働かない)実を養います。しかし、実の母親を含む捜索隊に所在がバレて連れ戻しに来ると、黙って実家に戻ってしまう実。宇和島に戻って奪い返そうとするもウジウジしている実を見て幻滅したミネは、無理心中を図って崖から飛び降りますが、たまたま釣りをしていた侠客の長田組組長金造(曾我廼家明蝶)たちが助け上げて一命を取り留めます。またしても迎えに来た母親に連れられて黙って去って行く実を見て、病床で涙を流すミネ。駆け落ち相手との別れまでが映画の前半部分。ミネの父親役で藤原釜足がちょっと出演。

 

翌年、大正7年の神戸。ミネは、助けてくれた金造の妻となりました。新婚初夜、ミネが寝室を離れた隙を突いて、金造がライバル勢力である岸本組の刺客に刺される事件が起きます。その刺客とは、かつて列車の暗殺事件の犯人である清次郎。金造は一命を取り留めますが、貧乏人の味方である正義に生きる長田組と権力に媚びて悪事の限りを尽くす岸本組(組長は安部徹)との対立は激化、岸本組は警察ともグルになって、さまざまな嫌がらせを仕掛けてきます。重体の金造に代わって、海外に出兵している兵士用の米を調達する大仕事を請け負った長田組を先頭に立って切り盛りしていくミネ。岸本組に労働者をさらわれて窮地に陥った時、岸本組の悪どさに嫌気が差して長田組に寝返った清次郎が手を差し伸べます。貧民街を率いるおきん(菅井きん)の援助を勝ち取って無事に大仕事を完了させたミネは、お互いに惹かれ合っていた清次郎と禁断の一夜を過ごすことに。

 

その後に起きた米騒動での民衆の暴動もなんとか収めたミネですが、指名手配となっていた清次郎を匿った容疑で警察に連行され、凄惨な拷問を受けます。痛めつけられても口を割らずになんとか釈放されたミネに、今度は金造が岸本組に拉致された一報が入ります。それを聞いた清次郎は拉致現場に同行して、金造への罪滅ぼしとミネへの愛のために、岸本組との命を懸けた戦いに単身で挑む・・・というのがあらすじです。

 

前半と後半で、もめ事が起きる→捕まる→連れ去られる→ピンチになる→一命を取り留めると同じようなことを繰り返しているので、ストーリーが冗長気味です。体を張った真木洋子ギラついた渡哲也貫禄のある曾我廼家明蝶といった主役陣から、常連の任田順好汐路章、脇役の武藤章生などにいたるまでそれぞれに見せ場があって熱演してますが、全体のバランスが取れてない印象。特に、任田順好の出番が必要以上にありすぎ。90分くらいの制約のあるプログラムピクチャーの方が、加藤泰の作風が際立つのではと個人的に思います。